IUとパク・ボゴム、最高の“ロマンスケミ” 『おつかれさま』は韓国ドラマ史に残る傑作に

『おつかれさま』感動のフィナーレに

 ここからIUとキム・ソンホのロマンスケミに頬が緩んで仕方がない。カップルとなったふたりが、“タイタニックごっこ”をする場面には笑わせられた。IUの表情に笑いをこらえるキム・ソンホが、「パク・トト」と呼ばれ、ついに笑いをこらえきれずに吹き出してしまう展開が面白い。とても幸せな場面で、思わずリピしてしまう。

 クムミョンの結婚が決まるまでの、父グァンシクとチュンソプとのやり取りも微笑ましい。クムミョンが生まれてから、常にグァンシクが愛したクムミョンへの一途な片思いに涙腺を刺激される。エスンが、チュンソプの母からの「私はクムミョンのことが大好きです」のメッセージを胸に抱きしめて喜ぶ場面でも、涙が溢れた。クムミョンが、以前の婚約者ヨンボムの母から「嫌いだ」と言われたことを思い出す。エスンが、娘を好きだと言ってくれるお姑さんであることに心から安堵し、嬉しそうにカードを撫でる姿は、「よかったね」と泣けてたまらない。

 物語のクライマックスである、クムミョンの結婚式でのグァンシクの言葉、「違うと思ったらバックして戻ってこい」。その言葉を聞いたクムミョンが、堪えきれずに号泣するのにもらい泣きしてしまう。幼き頃の父娘の場面が挟まれ、「私が綱渡りをすると、常に父が下で網を張って待っていた」と、クムミョンの成長を見守るグァンシクの愛情に、自分と父親とのことを重ねる人も多いだろう。結婚式の場面では、新婦クムミョンを見たときのチュンソプ役キム・ソンホの演技に胸を掴まれた人も多く、SNSでは「新婦を見た時の反応が100%!!! もうキム・ソンホと結婚したい」の声も見られた。

 エスンとグァンシク夫婦の人生も、娘と息子が独立し、ようやく手が離れて落ち着けるかと思いきや、そこから息子が起こした事件や娘の出産と、リアルな人生と同じく家族イベントは続いていく。そして、いつまでも変わらない貧乏に嫌気がさしたグァンシクは、一念発起し、貧乏から抜け出すために済州島に店を出す決断をする。グァンシクが一念発起した店は見事成功し、家族らは順風満帆な人生を送りだす。しかし、グァンシクの人生の時計は進み、彼の命のろうそくの灯りは小さくなっていく。

 物語が1950年代からの済州島を舞台にしているため、済州島の発展も描かれていて興味深い。エスン一家の店が繁盛していく流れの中で、テレビ撮影や、ドラマ『オールイン 運命の愛』も出てきてイ・ビョンホンも登場と、韓流ブームもやってくる。ブームとなった済州島を日本人が訪れる場面もあり、今や一大観光地である済州島の今に至る流れも面白い。

 9歳でグァンシクと出会ったエスンは、そこからずっと夫婦二人三脚でさまざまな人生の冒険を共にしてきた。その幼き頃からこれまでの夫婦愛と、エスンの母、娘、孫と4世代の女たちとの親子愛に、毎話毎話涙腺を刺激されてきた。中でも、エスンの母グァンネ(ヨム・ヘラン)には何度も泣かされたが、彼女が生まれ変わっているかのような描写に心が温まる。

 エスンが母親に「生まれ変わって楽しんでる?」「机に向かう仕事に就いて威張っていてほしい」と海に向かって声をかけるが、まさにその通りのヨム・ヘランの現代の姿に嬉しくなる。菜の花畑で指輪を拾った女の子が成長し、エスンの詩集を出版してくれる女性となっていたのだ。彼女がエスンの詩を読み涙を流し、「偉いの、すごく」とエスンの名前を撫でる姿は、記憶にはなくても魂は覚えていて、娘の奮闘を褒めて撫でているのだと、時を超えた愛情が沁みた。

 物語の中で、娘に「若いわね」と言われたエスンが、「ずっと同じよ」「心は同じなのに、ある日、鏡を見ると老人が映ってる、それが“老い”なの」と伝える場面がある。成長はすれども、心の中にある“ときめき”や“思い”は変わらぬままなのだ。人生は続いてくが、心は同じ。何歳であってもやりたいことはすればいい、自分の道を歩むプロセスこそが人生なのだと、エスンを通じて世界中の人々に伝わっていく。

 本作は、人の心を揺さぶり、共感や、同情、憐れみ、怒り、憤り、喜び、穏やかさ、ときめき、温かさなど、多くの感情を引き出す心の滋養となる作品だ。全編を通じてIUの熱を帯びた圧巻の演技に惹きこまれ、パク・ボゴムの愛の演技に魅了された。ムン・ソリとパク・ヘジュンの大人夫婦にも泣かされた。さらに全俳優陣の魂のこもった演技に感動し、夢中になり、登場人物の誰かに共感した。周囲の人を思い出し、自分の人生に想いを馳せる。これぞ“人間ドラマ”だ。「人間」や「人生」を描いた傑作として、韓国ドラマ史に燦然と輝き、多くの人が何度も観返すことだろう。全ての俳優陣と、人生を一生懸命に生きたエスンと、エスンたちを画面のこちら側で見守らせてもらい、共感した私たちにも「おつかれさま、感動したね」と盛大な拍手を送りたい。

参照
https://news.nate.com/view/20250402n24440

■配信情報
『おつかれさま』
Netflixにて独占配信中
出演:IU、パク・ボゴム、ムン・ソリ、パク・ヘジュン
演出:キム・ウォンソク
脚本:イム・サンチュン

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