『ガンニバル』ドラマ全体の原点に立ち返る第5話 “若き銀”恒松祐里の見事なキャスティング

『ガンニバル』“原点”に立ち返る過去編

 今回のエピソードもロケーションが非常に秀でているのだが、それ以上に際立っていたのは、ひとつひとつの撮りかた――ショットの強度である。正宗と銀が逢瀬を重ねる洞窟は、鬱蒼とした森の奥に位置している。そこへ向かう途中の森では高い木々の隙間から太陽光が放射状に差し込んでおり、来乃神神社の御本尊の神々しさをあらわしているように見える。また洞窟の内部は薄暗く、広々として殺風景。それを供花村そのものだと捉えると、わずかな隙間から射し込む光を得て生える草花は、半ば場違いな存在である正宗と銀のようでもある。

 洞窟で2人が交わった後、正宗を思うままに動かすことに成功した銀は妖しげな微笑みを浮かべる。闇のなかに浮かぶように一瞬だけ照らされる彼女の口もとが、その狂気を体現する。一方で、奉納祭の夜に広場で燃える御神体を背景にして2人が対話をする際には、正宗のかけているメガネが片方だけ光に照らされてその奥の目が見えなくなる。あたかもそれは、正気から銀の狂気へと完全に取り込まれていく彼自身を体現しているかのようにも映り、「この村は狂うとる。唯一まともな僕らだけがそれを正すことができるんじゃ」と、危うい正義感に駆り立てられている様子がそれを補っているのだ。

 その祭りの夜に、銀は正宗に子を宿したことを伝える。正宗は、まだ見ぬその子どもに“白銀(しろがね)”という名を与える。それはすなわち、後に“あの人”となる者のことであろう。そしてもうひとつ、終盤に向けて重要な存在が登場する。村人たちに捕らえられ、神への捧げ物とされそうになった銀の前に現れる山賊たち。原作では特に名前は付けられていなかったが、このドラマでは彼らに「カシハベ」という名が与えられている。銀曰く、「人を喰らう」という彼らこそ、この供花村の忌まわしき真実のカギを握るのであろう。

■配信情報
『ガンニバル』シーズン2
ディズニープラス スターにて独占配信中
出演:柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、高杉真宙、北香那、杉田雷麟、山下リオ、田中俊介、志水心音、吉原光夫、中島歩、岩瀬亮、松浦祐也、永田崇人、ジン・デヨン、六角精児、恒松祐里、倉悠貴、福島リラ、谷中敦、テイ龍進、豊原功補、矢柴俊博、河井青葉、赤堀雅秋、二階堂智、大鷹明良、利重剛、中村梅雀、橋爪功、倍賞美津子
原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
監督:片山慎三、佐野隆英、大庭功睦
脚本:大江崇允、廣原暁
プロデューサー:山本晃久、半田健
アソシエイトプロデューサー:山本礼二
©2025 Disney

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