『あんぱん』“ヤムおんちゃん”阿部サダヲは食わせもの? 中園ミホ脚本の巧妙な人物描写

第2話の注目ポイントは草吉の素性である。事前の出演者発表でもじゃもじゃの髪とパン作りの腕はたしかという紹介文を見て、目ざとい視聴者は「さてはこいつがジャムおじさんだな」と目星をつけていたはずである。答えは「当たり」で、順当に好奇心を満たした後も見過ごせない設定が盛られていた。
屋村草吉がその人の名前で、職業は“フーテン”。令和の時代にわからない人もいるかもしれないので「住所不定」と補足。自己紹介で自分のことを「住所不定」という人は変わった人である。屋村という名前を知ったのぶが「ヤムおんちゃん」と言ってくれたおかげで、いろいろ手間が省けました。のぶちゃん、ありがとう。

パンに歓喜するのぶに対して、嵩は同じくらい美味しいパンを銀座で食べたと言い、草吉の表情が一瞬曇る。嵩が食べたパンは真ん中にトッピングがあること、回想シーンで「美村屋」として出てくることから、某店がモデルであることは確実である。「子どもは客引きになる」なんていう台詞もあった。草吉がパン作りをどこで習得したかは追って明らかになると思われるが、現時点で相当含みのあるキャラクターであることを銘記しておきたい。
結太郎は病気で、病を押して各地を飛び回っている。「おなごも大志を抱きや」と言われたのぶの夢は、銀座のパン屋で「お腹いっぱい食べる」こと。子どもらしいと言えばそれまでだが、ヒロインが自分の夢を追求する物語ではないとこの段階ではっきりさせるのは、なかなかに用意周到な朝ドラ112作目である。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、志田彩良、二宮和也、瀧内公美、山寺宏一、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、阿部サダヲ、松嶋菜々子
作:中園ミホ
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















