『クジャクのダンス』間宮啓行の熟練の“演じ分け” 衝撃の正体は最終章にどう関わる?

『クジャクのダンス』間宮啓行熟練の演じ分け

 カメラが捉えた“カラビナ男”と鳴川の細部の類似性や、そもそもの作劇から、このふたりが同一人物なのだと推測していた方も多いようだ。この結果を見抜いていた方々に対しては「さすが」といったところである。いま思えばたしかに、ふたりのキャラクターの声に同質の何かを感じていた気がする。けれどもリアルタイムで物語を追っていたいち視聴者としては、そんなことには気がつきもしなかった。個人的には確実に、完全に、間宮は“一人二役”のように声だけでキャラクターを演じ分けていたように思う。

 こんなとんでもない芸当をやってのけた俳優・間宮啓行が民放の連続ドラマに出演するのは、これが初めてのこと。「いままでどこにいたんだろう?」と思う方が多いことと思うが、シェイクスピア作品をはじめとし、これまで演劇シーンで経験を積み重ね、業を磨いてきた。鳴川のあのコテコテの関西弁と、“カラビナ男”の声はうまく結びつかない。が、これは何も、声の演技の振り幅の大きさで極端な違いをつけているわけではないと思う。それぞれのキャラクターを“声”をベースに表現した結果、こんなにも違う人物像が生まれたのだろう。そして私たちは騙されたのだ。

 心麦の味方としては心苦しいところだが、いちエンターテインメントファンとしては頼もしいところ。これを機に、間宮啓行という演技者を映像作品で目にする機会は増えるのではないだろうか。彼のような存在が、作品のクオリティを底上げし、演者たちの士気をも上げるはず。間宮の熟練の業に酔わされた私たちは、これからも彼の力を求めていかなければならない。その声はきっと、届くはずである。

『クジャクのダンス、誰が見た?』の画像

金曜ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」

「このマンガがすごい!2024」にもランクインした浅見理都の同名漫画を実写化するヒューマンクライムサスペンス。クリスマスイブの夜に元警察官の父親を殺された娘が、遺された手紙を手がかりに真相に迫っていく。

■放送情報
金曜ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:広瀬すず、松山ケンイチ、森崎ウィン、瀧内公美、絃瀬聡一、野村康太、清乃あさ姫、斉藤優(パラシュート部隊)、酒井敏也、酒向芳、藤本隆宏、西田尚美、仙道敦子、原日出子、リリー・フランキー、磯村勇斗
原作:浅見理都『クジャクのダンス、誰が見た?』(講談社『Kiss』所載)
脚本:金沢知樹
プロデュース:中島啓介、内川祐紀、丸山いづみ
演出:田中健太、青山貴洋、福田亮介、棚澤孝義
主題歌:Ado「エルフ」(ユニバーサル ミュージック)
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる