『風、薫る』“定石崩し”の構成が生む新鮮さと戸惑い “看護”が突きつける社会の矛盾

ドラマに別れはつきもの。NHK連続テレビ小説『風、薫る』第10週「疾風に勁草を」(演出:新田真三)では見習い看護婦7人のうちひとりが辞めることになる。
ナイチンゲールを誰よりも敬愛していた東雲ゆき(中井友望)が自分は看護婦には向いていないと見切りをつけた。心臓を患っていた小野田(宮地雅子)の死を受けとめきれなかったのだ。生前から、衰弱していく小野田の姿を見て涙が止められなかったゆきは、亡くなったあとも起きられず何日も研修を休む。
愛情を注いだ人が亡くなる体験をりん(見上愛)やトメ(原嶋凛)は既に家族を通して味わっている。だが、ゆきのようにはじめてだとなかなか受け止めるのが難しいだろう。もう少し実務を続けて慣れれば、トメのように悲しい感情を押し殺して仕事に邁進できるようになるのかもしれない。いや、ゆきは愛した人の死に慣れることを選ばなかったのだ。慣れるのもしんどいものだから。

フユ(猫背椿)は「家事だと思って」仕事をしている。「毎日誰かしら死んでいく。逃げられるなら逃げたほうがいい。向いてなきゃ辛いだけ」そういうふうに割り切れないと看護婦は難しい仕事なのだ。
だがトメは、ゆきのことを「看護婦としては駄目かもしれねえが、おらは好きだ」と労わる。トメは仕事もできるし気も利くし、なんていい人なのだ! トメの言葉に救われるのと同時に、看護婦はメンタルが相当強くないとできない仕事、ある意味修羅場なのだと痛感する。看護婦はサブタイトルの「疾風に勁草」のように強い風に打たれても立ち続ける草でなくてはならない。風は心地よく薫っているばかりではない。たまたま今週、日本列島に台風6号が来たことで、実感した。メンタルが強くないと難しいということが、りんたちがゆきを見送るときの台詞に如実に表れていた。

第10週は、前半3話分がゆきの挫折エピソード、後半2話分は、遊女・夕凪(村上穂乃佳)のエピソードの新展開になる。どちらも看護という仕事は矛盾を孕むもので、患者を治す、助けるという単純さではないということを示している。
ゆきが去って4か月、りんや直美(上坂樹里)は内科に配属される。そこに担ぎ込まれたのは心中未遂の男女。男のほうは亡くなり、夕凪という名の遊女だけが生き残る。遊女は治療を後回しにされたうえで、病室ではない物置のようなところに隔離される。にもかかわらず、生き残ったのは遊女のほう。手早く適切に治療を施した男性のほうが亡くなってしまったのだ。なんて皮肉なのか。だが助かったことを夕凪は嘆く。遊郭に連れ戻されて地獄のようなひどい目に遭うのがわかっているからだ。




















