『ドラゴンボールDAIMA』をもう一度振り返る 思い出させてくれた“鳥山明らしさ”

『ドラゴンボールDAIMA』の“鳥山明らしさ”

 そこで鳥山が試みたのは、魔人ブウ編で回帰しようとした初期の牧歌的な楽しい世界の再構築だった。自分が作ったバトル漫画の面白さを残したまま、コミカルで楽しい作品に回帰することが、アニメに関わる中で鳥山が自身に課したテーマだったのではないかと思う。

 それは遺作となった『ドラゴンボールDAIMA』を観ると、はっきりと理解できる。

 物語は魔人ブウ編の後から始まるのだが、悟空たちは大魔界の新たな王となったキング・ゴマーに、ドラゴンボールの力で子どもの姿に変えられてしまう。

 元の姿に戻るために悟空たちは大魔界へと冒険の旅に出る。子どもの姿に戻った悟空たちの姿は初期の『ドラゴンボール』のキャラクターのように丸っこくてかわいらしく描かれており、悟空たちが大魔界を旅する様子も、初期の展開を思わせる。もちろんバトルもしっかり描かれるのだが、殺伐とした殺し合いというよりは、子ども同士の喧嘩のようで、ゴマーたち魔界の住人も子どもっぽく描写されている。

 映画化された『SAND LAND』を筆頭に『ドラゴンボール』の連載を終えた後の鳥山明の漫画はデジタル作画を駆使した、絵本のような優しい作品がほとんどだった。

 『DAIMA』もその流れにある作品で、最後に鳥山が『ドラゴンボール』を牧歌的な世界に着地させたことが、何より嬉しかった。

 ゼッド feat. C&Kの歌う本作の主題歌「ジャカ☆ジャ~ン」の歌詞に「何千の一撃(ジャブ)が 変なギャグが待っているんだ」とある。

 まさに『DAIMA』はそういうアニメで、ジャブ(バトル)とギャグの両立こそが『ドラゴンボール』だと言えよう。

■配信情報
『ドラゴンボールDAIMA』
各種配信サイトにて配信中
原作・ストーリー・キャラクターデザイン:鳥山明
シリーズディレクター:八島善孝、小牧文
アニメーションキャラクターデザイン:中鶴勝祥
シリーズ構成・脚本:柿原優子
©バード・スタジオ/集英社・東映アニメーション
公式サイト:https://dragonballdaima.com/
公式X(旧Twitter):https://x.com/DB_official_jp

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