『デアデビル:ボーン・アゲイン』エッジの効いた作風に大興奮! MCUに吹き込む新たな風

“ヘルズ・キッチンの悪魔”が帰ってきた! 『デアデビル:ボーン・アゲイン』がディズニープラスにて3月5日から独占配信された。本作はそのダークでハードな作風で、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に新しい風を吹かせるだけでなく、その限界を押し広げる作品となるだろう。早速第1話と第2話のレビューをお届けしたい。
本格的なMCU参加への期待
『デアデビル』シリーズにとって、本作で本格的なMCU参入となることは間違いないが、マット・マードック/デアデビル(チャーリー・コックス)はこれまでもMCU作品に顔を出してきた。公開当時、映画館を沸かせた『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でのサプライズ登場や、ドラマ『シー・ハルク:ザ・アトーニー』、『エコー』など様々な場面で登場してきた。マードックの宿敵である“キングピン”ことウィルソン・フィスク(ヴィンセント・ドノフリオ)も『ホークアイ』や『エコー』に登場し、MCUでの存在感を増していた。第1話でマードックとフィスクがカフェで会話するシーンでエコーについて言及されていることにも、物語が地続きであることを実感させられる。
『マーベル/デアデビル』では、映画『アベンジャーズ』でのロキ襲来を受けた後のニューヨークを舞台に、マードックとフィスクの対面から、二人の深い因縁と衝突を描いた。『デアデビル:ボーン・アゲイン』に繋がるシーズン3の最終話では、原作でも知られるヴィラン、ブルズアイことベンジャミン・“デックス”・ポインデクスター(ウィルソン・べセル)がフィスクとバネッサ(アイェレット・ゾラーの結婚式に乱入。ブルズアイを止めようとするマードックを含めた乱戦状態になり、最終的にフィスクがブルズアイの脊髄を折ったことで彼は停止。マードックとフィスクは、マードックの大切なカレン・ペイジ(デボラ・アン・ウォール)とフランクリン・“フォギー”・ネルソン(エルデン・ヘンソン)、フィスクの大切なバネッサと、互いの大切な人を傷つけないことを誓い合うことで、その場を収めた。
しかし、ラストシーンでは脊髄の特殊手術を受けるブルズアイの姿が。彼が『デアデビル:ボーン・アゲイン』に登場することは以前から報道されていたが、なんと第1話からマードックとブルズアイの激しい戦闘シーンを見守ることになるとは思わなかった。
衝撃的な幕開けに唖然、“生”を感じさせるアクションが最高
正直、前作を観ていなくても本作は十分に視聴者を引き込む力を持っている。特に第1話は衝撃的な幕開けを描いた。過去のドラマシリーズからカレン・ペイジとフランクリン・“フォギー”・ネルソンが再登場し、マードックと一緒に仲の良い仲間の門出を祝う飲み会に参加していた。そんな楽しいひと時が、私たちの理解も追いつかないまま一変してしまう。
もともと冒頭の映像だけで撮影へのこだわりを感じられるのだが、ここで描かれるブルズアイとデアデビルのファイトシーンで、本シリーズへの安心感がさらに増す。アクションとバイオレンスは健在、いやむしろパワーアップしているかもしれない。スモークが充満するバーの中で、まだ一般人がいるにもかかわらず始まる戦闘。周囲にあるものを全て武器のように使うブルズアイのナイフ投げが相変わらず凄いが、何本もぶっ刺さった状態で人を逃しながら応戦していくデアデビルも凄い。そしてシリーズファンにとっては欠かせない、狭い空間での戦いにつながっていく。特に『デアデビル』のアクションといえば“廊下戦闘”と言っても過言ではないほど、狭い廊下で繰り広げられるファイトは作品を象徴するシーンだ。
何より素晴らしいのは、彼らの戦いぶりが『デアデビル』独自の着眼点を思い出させてくれること。それはつまり、かなりハードで痛そうで血まみれになるバイオレンス描写とともに、“疲弊する人間”が描かれることだ。MCUの中でアクションシーンは珍しいものではない。しかし、『デアデビル:ボーン・アゲイン』の第1話で描かれるような生身の男同士が殴り合って、攻撃を受け合って、移動しながらだからもっと疲れて、でも隙を見せたら殺される……というギリギリの線を渡り合うようなリアルなファイトスタイルは、滅多に見ることができない。盲目なマードックは時々それを忘れてしまうくらい周囲が見えているかのような動きを見せるが、それはあくまで超人的な聴力や嗅覚によるものだ。彼は不死身でもないし、血清を打ったスーパーソルジャーでもない。一方、彼と対峙する者たちも同じように人より少し頑丈だったり、常人離れした力を持っていたりすることもあるが、やはり彼らも銃弾を受ければ倒れる“人間”なのだ。その事実が、『デアデビル』の壮絶なバイオレンスシーンの“生々しさ”を際立たせる。
この第1話で描かれる“悲しい出来事”について、エグゼクティブプロデューサー兼監督を務めたアーロン・ムーアヘッドは、「その悲しみはシーズンを通して波紋のように広がっていく」と先日のオンライン会見で語っていた。今作でマードックはその悲しみを通して“もう一人の自分”を封印する。デアデビルのいなくなった街にはホワイトタイガーが自警団として犯罪と戦っているが、警察官の数の減ったニューヨークは未だかつてない危機に直面している。さらにマードックの悩みの種が尽きることはない。なぜなら、あの宿敵キングピンがニューヨーク市長になってしまったからだ。
























