ゾーイ・サルダナからショーン・ベイカーまで 第97回アカデミー賞で印象的だったスピーチ

スピーチで振り返る第97回アカデミー賞授賞式

 第97回アカデミー賞受賞式が日本時間3月3日にロサンゼルスで開催された。『ANORA アノーラ』が最多5部門(作品賞・主演女優賞・監督賞・脚本賞・編集賞)で受賞。続いて『ブルータリスト』が3部門(主演男優賞・撮影賞・作曲賞)を受賞した。『ANORA アノーラ』の監督・脚本・編集を務めたショーン・ベイカーは3度ステージでスピーチを行うことに。一方、主演女優賞受賞が確実視されていた『サブスタンス』のデミ・ムーアが受賞を逃したり『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』が無冠の結果だったりと、予想外な展開もあった。

 今年は日本では放映権がWOWOWからNHKに移行。アカデミー賞の司会も昨年まで連続で務めていた常連のジミー・キンメルからコナン・オブライエンに変わるなど、生中継や式の雰囲気が例年と比べると少し違うのが印象的だった。果たしてその違いは“良かった”のだろうか。授賞式のハイライトを、受賞者のスピーチと共に振り返りたい。

シンシア・エリヴォ&アリアナ・グランデによる圧巻の歌唱

『ウィキッド ふたりの魔女』のシンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ(写真:REX/アフロ)

 授賞式は開幕と同時にピークを迎えたと言っても過言ではないだろう。従来であれば司会者によるモノローグから始まる式だが、今年は『ウィキッド ふたりの魔女』からシンシア・エリヴォとアリアナ・グランデが歌唱パフォーマンスを披露した。

 ドロシーが赤い靴を鳴らす『オズの魔法使』のシーンから始まり、ロサンゼルスの名所で撮影された映画の名シーンによるモンタージュが流れた後は、トップバッターのグランデが登場。レッドカーペットで着ていたシャンパンカラーのドレスから、ドロシーの赤い靴を思わせるレッドドレスに着替え、『オズの魔法使』の主題歌「Over The Rainbow」を歌唱。続いて登場したエリヴォは映画『ザ・ウィズ』から「Home」を歌った。『ザ・ウィズ』は『オズの魔法使』がアフリカ系アメリカ人出演者によってミュージカル化されたブロードウェイを基に製作された作品で、エリヴォは当時ダイアナ・ロスが演じたドロシーの曲を歌ったのである。そして2人で『ウィキッド ふたりの魔女』の「Defying Gravity」を披露。『オズの魔法使』に始まるシリーズの歴史を振り返るような素晴らしい演出と圧巻の歌唱だった。

冗長すぎた? 司会のオープニングモノローグ

 オープニングパフォーマンスに続いて、今年の司会であるコナン・オブライエンにバトンがわたる。作品賞にもノミネートされた『サブスタンス』のワンシーンのパロディをしながら登場するシーンは会場の笑いを誘った。しかし、従来なら10分以内、長くて15分以内にオープニングは終わって助演賞に移行するのだが、すでに歌唱パフォーマンスで9分も経過している。だからこそ『サブスタンス』ネタで終われば尺的にはちょうどよかったのだが、それからオブライエンのモノローグがその後18分19秒も続くなんて誰が予想できただろうか。

 オブライエン自身はキンメルに比べ視聴者からの好感度が高く、式でのトークも不快感がなかった。ジョークも気が利いたものが多く、SNSでの反応も悪くなかったが、作品賞にノミネートされた全ての作品やノミニーに言及する様子は正直集中力に欠けており、すでに長い時間をかけているのに最後に「I Won’t Waste Time(僕は時間を無駄にしない)」という自作曲を披露。全体的にまとまりのない印象だったが、それにとどまらず冗長なモノローグを行ったことにより3時間半を予定していた授賞式は15分超過し、最後の方の受賞者のスピーチ時間が音楽で急かされるような事態になったことは、良い結果と言えるのだろうか。

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