『御上先生』吉柳咲良のあふれる感情が胸を打つ ヤングケアラーと生理の貧困が映す現実

『御上先生』吉柳咲良の溢れる感情が胸を打つ

 「政治的」という言葉の両義性について考えてしまう。富永(蒔田彩珠)は椎葉が生きる現実を「私たちの国の話」と言い、「いま椎葉の話を聞くより大切な話なんてない」と断言する。この瞬間、個人が直面する生きづらさは社会と接続している。社会を作り、動かしているのは政治である。これに対して、古代や塚田(及川光博)が見ているのは権力ゲームとしての政治であり、そこでは生徒の窮状も手札の一つになってしまう。

 ゲームの中では官僚も駒の一つにすぎないのか。プライベートを犠牲にして倒れた津吹(櫻井海音)の「何のために仕事してるんですかね」がむなしく響いた。槙野(岡田将生)の脳裏に過去の出来事がフラッシュバックする。第4話で槙野が墓参に訪れていたのは、同じく病に倒れた同僚の墓だったことが推察される。槙野の心にあるのは怒りか、それとも友の無念か。

 途絶えていたファックスの怪文書には塚田と中岡(林泰文)、溝端(迫田孝也)の写真があった。会食の席で塚田は裏口入学のあっせんを持ちかけ、溝端が古代への対応を相談していたはず。これらは事務次官を狙う塚田が古代と仕組んだことであり、しょせん御上や槙野、中岡、溝端は使い捨て要員。官僚である自分たちが上にとって都合の良い存在だと御上や槙野は承知しているだろう。一色(臼田あさ美)と積極策に出る御上に残された時間は多くなさそうだ。

 吉柳咲良がポテンシャルを秘めた逸材であること、すでにしてスターの風格をまとった彼女の未来が明るいことは過去作を観れば明らかだ。吉柳の本領は画面の枠に収まらないあふれ出る感情と、周囲を巻き込まずにおかない共感力といえる。内なる物語が言葉に表情に、一挙手一投足にあらわれる様子は観るものの心を打つ。吉柳に限らず、成長著しい若き俳優陣は今作の希望である。

『御上先生』の画像

日曜劇場『御上先生』

「日本の教育を変えてやろう」という熱意を持ったエリート文科省官僚が高校教師となり、令和の18歳とともに、日本教育にはびこる権力争いや思惑へ立ち向かうオリジナル学園ドラマ。

■放送情報
日曜劇場『御上先生』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:松坂桃李、奥平大兼、蒔田彩珠、窪塚愛流、吉柳咲良、豊田裕大、上坂樹里、髙石あかり、八村倫太郎、山下幸輝、夏生大湖、影山優佳、永瀬莉子、森愁斗、安斉星来、矢吹奈子、今井柊斗、真弓孟之、西本まりん、花岡すみれ、野内まる、山田健人、渡辺色、青山凌大、藤本一輝、唐木俊輔、大塚萌香、鈴川紗由、芹澤雛梨、白倉碧空、吉岡里帆、迫田孝也、臼田あさ美、櫻井海音、林泰文、及川光博、常盤貴子、北村一輝
脚本:詩森ろば
脚本協力:畠山隼一、岡田真理
演出:宮崎陽平、嶋田広野、小牧桜
プロデュース :飯田和孝、中西真央、中澤美波
教育監修:西岡壱誠
学校教育監修:工藤勇一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/mikami_sensei_tbs/

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