市原隼人の経験値が生む“貫禄” 『べらぼう』の世界で鳥山検校をどう主張していく?

『べらぼう』市原隼人の経験値が生む貫禄

 横浜流星が主演を務めるNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』には、これからどんどん新キャラクターが登場してくるのだろう。それはつまり、主人公である蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)が新しい扉を開き、彼の目の前の世界が広がっていくことを意味している。いったい誰がどのように、蔦重の人生に関わってくるのだろうか。

 最新回の第8話「逆襲の『金々先生』」では、鳥山検校という人物が新たに登場した。おそらく、彼は蔦重と深い関わりを持つことになるだろう。そのような存在を演じているのは市原隼人である。

 本作は、吉原の貧しい庶民の子に生まれた蔦重が、“江戸の出版王”へと成り上がっていくさまを描くもの。波乱万丈の人生を歩んでいく彼がいま奔走しているのは、“本”というメディアを利用し、吉原を盛り上げることだ。この厳しい環境下で生きる人々の支えになるべく、仲間をつくり、敵をつくりながら、駆け回っているところなのである。

 そんな『べらぼう』で市原が演じている鳥山検校は、盲目の大富豪だ。「検校」というのは盲人に与えられた最高位の官位であり、彼は幕府の許しを得て高利貸しを行い、多額の資産を築いているらしい。いま物語の中心に立っているのは、蔦重とともに吉原で育った花の井(小芝風花)で、彼女が伝説の花魁の名跡である「瀬川」を継いだことで人々は色めき立っている。その瀬川を、やがて鳥山検校は1400両で身請けするのだという。これが、彼が蔦重と深い関わりを持つことになるだろうと先述した理由だ。いくつかの場面を見るにつけ、瀬川が蔦重に想いを寄せていることが分かっているからである。

 いまのところはまだ鳥山検校と蔦重は出会っていない。検校が瀬川と出会い、短いやり取りをするだけと、その出番はごくごくかぎられたものだったのだ。それでも、これを演じる市原は、検校がいかに只者ではないかを端的に示してみせた。彼が口にしたのは間違いなく脚本上に記されているセリフであり、それに対して瀬川役の小芝が反応することでシーンは成立する。けれどもこのときのセリフの発し方や細かな振る舞いしだいで、その印象はまるっきり変わってくるはずだ。市原のセリフ回しは厳かで、気品の溢れるものだった。本作において鳥山検校は特異な存在であると、市原は短いシーンの中で明示してみせたのだ。豊かなキャリアで得た、経験値が物を言う貫禄。単なる技術ではない何かが、市原の演技には感じられた。

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