朝ドラヒロインの“親”が担う役割は? 北村有起哉&麻生久美子『おむすび』コンビの尊さ

朝ドラヒロインの“親”が担う重要な役割

 この夫婦に扮する北村と麻生の演技の質感も好対照だ。当然ながらシーンによってはさまざまな変化があるが、基本的に北村の演技は硬質で、麻生の演技は軟質だと感じている。聖人の感情が大きく動いたり一気に変化しないかぎり、北村の声も表情もトーンは一定。対する麻生は声も表情も朗らかで豊かで、そこには愛子の自由な性格が感じられる。ふたりの生み出した両親像は、真面目で明るく前向きなリーダー気質の結と、しっかりと繋がっている。個々の演者の脚本を読み解く能力の高さあってこそのものだろうが、そこにはさらにそれを表現する力が必要であり、チームで正確に連携を取る力も求められるだろう。さすがは日本のエンターテインメント界の最前線を走り続けてきたふたりである。ちなみに、愛子の機嫌が悪くなったときなどには、北村の演技が軟質に、麻生の演技が硬質になるのも面白い。

 ここでふと気がついたのだが、『虎に翼』(2024年度前期)、『ブギウギ』(2023年度後期)、『らんまん』(2023年度前期)、『舞いあがれ!』(2022年度後期)……と、近年の朝ドラを振り返ってみると、いずれも物語の主人公たちは両親(もしくはそのどちらか)を病で失っている。劇中ではその悲痛な別れが描かれ、どれもいまだによく覚えている。これまであらゆる朝ドラで「家族」が描かれてきたわけだが、『おむすび』ほど「家族」の日常にフォーカスし続けるものは珍しいのではないだろうか。じつは本作は「食」以上に、「家族」という存在のかけがえのなさ、ありふれた日常の尊さを描いているのかもしれない。これを描き続けるためにも、聖人と愛子の存在は欠けてはならないのだ。

■放送情報
連続テレビ小説『おむすび』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:橋本環奈、北村有起哉、麻生久美子、佐野勇斗、濱田マリ、中村アン、犬飼貴丈
語り:リリー・フランキー
主題歌:B'z「イルミネーション」
脚本:根本ノンジ
制作統括:宇佐川隆史、真鍋斎
プロデューサー:管原浩
写真提供=NHK

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