『アンサンブル』は弁護士ものなのに恋バナばかり? 実は相性が良い“法律”と“恋愛”

現在放送中のドラマ『アンサンブル』(日本テレビ系)は、リーガルラブストーリーである。コスパ/タイパ重視で現実主義の弁護士・瀬奈(川口春奈)と理想主義で人権派を目指す新人弁護士・真戸原(松村北斗)。正反対の二人がさまざまな恋愛トラブル裁判に立ち向かうバディものとしても注目していたのだが、現時点でリーガル要素はあまり主軸にない。もっぱら作品の関心は、8年前に行方をくらませた瀬奈の元カレ・宇井(田中圭)を含めた三角関係なのである。
公式サイトのイントロダクションには「ぶつかる。だから、響きあう。法廷からはじまる、リーガルラブストーリー。」と記されているのだが、2月1日に放送された第3話では、法廷に立つシーンが一切出てこなかった。瀬奈は前回発覚した宇井の娘・咲良(稲垣来泉)の面倒を見る羽目になり、真戸原は妹・凛(香音)が怪しい男に拉致・監禁される事件に直面その後は咲良の恋を応援すべくWデートへ。しかし、機嫌を損ねた咲良のためにサプライズで気球に乗ったりと、とにかくやることが多すぎて法廷に立つ暇がなかった。

……じゃあ、なぜわざわざ“弁護士”の設定に? リーガルドラマの観点から『アンサンブル』について考えてみたい。
そもそもなぜ私が『アンサンブル』のリーガル要素を諦めきれないかというと、法律×恋愛のドラマが意外にも珍しいからだ。たとえば今期は、同じく男女バディのリーガルドラマとして、上白石萌音と高杉真宙が出演する『法廷のドラゴン』(テレビ東京系)が放送中である。本作も『アンサンブル』と同様に弁護士同士の組み合わせで、主人公・竜美(上白石)の父(田辺誠一)は二人の関係を訝しんではいるのだが、現時点であまり恋愛の香りはしていない。2024年放送された趣里主演『モンスター』(カンテレ・フジテレビ系)や中島健人主演『しょせん他人事ですから 〜とある弁護士の本音の仕事〜』(テレビ東京系)も、主人公が弁護士で、相棒が弁護士またはパラリーガルの男女バディものではあるのだが、どちらも恋愛要素を含まない。
主人公の職業を弁護士から広げ、法律を扱うドラマ全体に目を向けてみよう。木村拓哉が検察官で松たか子が検察事務官の『HERO』(フジテレビ系)や、行政書士をテーマにした櫻井翔と堀北真希のW主演作『特上カバチ!!』(TBS系)は恋愛関係に発展する。なので、法律×恋愛のドラマが「まったくない」とは言い切れない。だが、毎年必ず放送されるリーガルドラマの母数を鑑みれば、恋愛要素を含む作品は少ないほうだと思う。惚れた腫れたのない対等な関係性の男女バディものが多数生まれているなか、あえて『アンサンブル』は恋愛方面に舵を切っているのだ。

だがしかし、リーガル×恋愛という設定自体は、わりかし相性の良い組み合わせだと思う。瀬奈は恋愛トラブルが専門なので、刑事事件のように巨悪を打ち負かす展開は少ないだろうが、バディとは“勝訴”という目的を共有しているがゆえに、関係性を育みやすい。現に、瀬名と真戸原は案件絡みという名目で、ブライダル会場のサプライズプロポーズプランを体験してみたり、ラブホテルに入ろうとしたりする(個人的には好ましい展開ではなかった)。同じ案件を抱えているバディだからこそ、二人だけのイベントも発生させやすい。