石原さとみ、“宝物のような経験”経てキャリアプランに変化 「全く違う感情が芽生えている」

石原さとみ、𠮷田恵輔との念願タッグを語る

 出産を経て、3年ぶりの連続ドラマ復帰作となった『Destiny』(テレビ朝日系)も大きな話題を呼んでいる石原さとみ。出産後初の芝居に挑んだ主演映画『ミッシング』では、行方不明の娘を探し続ける母親役を演じている。「𠮷田恵輔監督と一緒に仕事がしたい」という自らの願望が実現した石原に、20年以上におよぶキャリアにおいても特別なものになったという特別な経験を振り返ってもらった。

『ミッシング』での経験は「全てが学びだった」

石原さとみ

ーー『ミッシング』は、“𠮷田恵輔監督の作品に出演したい”という石原さんたっての希望で実現した作品だそうですね。

石原さとみ(以下、石原):7年前に𠮷田さんに直談判して、その3年後に脚本をいただいて、去年撮影して……。パニックになりながらの撮影でしたが、監督に演出いただけてたくさん学びがありましたし、宝物のような時間と経験でした。

ーー7年の時を経て、ようやく公開を迎えました。現在の心境はいかがですか?

石原:こうやって取材していただいているいまも、すごく不思議な感覚なんです。自ら動いたものがちゃんと形になって皆さんのもとに届けられる。夢が叶ったなという思いです。「この人は私を変えてくれる」という当時の私の嗅覚は正しかったなと。憧れの𠮷田監督とご一緒できて、すごく幸福度が高いです。

ミッシング

ーー大きな達成感を得られたと。

石原:だからよく「次どうなされるんですか?」と聞かれるんですけど、まだそこまで考えられていなくて。映画の打ち上げのときに、スタッフのみなさんから「次が大変だよ」と言われたんです。そのときは撮影が終わったばかりでポカーンという感じだったんですけど、まさにいま、次どうするか悩みに陥っている状況で……。でもこうやって悩めるのが幸せなことなのかなと思います。『ミッシング』で過ごした時間、得た経験と学びを宝箱にしまって、ずっと大切にしておきたい気持ちと、またどこかでこの宝箱を開けたい気持ちで揺れているのがいまの心境です。

ーー『ミッシング』での経験は、芸歴20年以上の石原さんにとってもそれだけ大きなものだったわけですね。それだけ熱望していた𠮷田監督の作品にしてみて、事前に抱いていた理想をある程度実現できたと思うのですが、想定外だったことはありましたか?

石原:うろ覚えではあるんですが、最初に脚本を読んだときよりも産後に読んだときの方が、次のページが開けないくらい心情的に恐くなったのを覚えています。「撮影に入ったら精神的にやられてしまうかも」とも思ったんですよね。生きて帰ってこられるのかを心配してしまうほど、覚悟が必要だなと思いました。こうやってインタビューを受けながら当時のことを思い出すと、とてつもなくいろんなことを学んだなと思い知らされるんです。一方で、学んだことが時間とともに薄れてしまうような気もしていて、それが自分としては怖いところでもあって。だからいまも悶々としています。

石原さとみ

ーーそこまでとは驚きです。今回の現場で具体的にどういうことを新しく学んだのか教えていただけますか?

石原:監督はよく「ドキュメンタリーを撮りたい」とおっしゃっていて。例えば「コップを取る」と台本に書いてあったら、普通はコップを取ることを意識するじゃないですか。でも𠮷田監督の前では、意識してコップを取ったらそれがバレてNGになるんです。お芝居に見えて、画も嘘っぽくなると。必要なのは、そういうことを無意識にできるようにする技術ですよね。

ーーなるほど。

石原:みかん農園でみかんを選別するシーンなんかは、いつの間にか撮影が終わっていたんですよ。セリフもありつつ、みかんを選別する動きをやっているんですけど、自分ではお芝居をしている感覚が全くなくて。そこで「𠮷田組の“ドキュメンタリーのようなお芝居”ってこういうことか」と実感しました。いままで𠮷田監督の作品に出演してきた役者さんたちがみんなこんなことをできるってすごいなと思いましたね。自分を消す方法だったり、自分の意識を無意識にすること……とにかく全てが学びでした。𠮷田監督にはとてつもないリスペクトの気持ちがあります。

ミッシング

ーー“意識を無意識にする”って相当難しいですよね。全く想像がつかないです。

石原:私もいままで全く考えたことがなかったんですけど、こうやるんだと思って。あと、この作品では、「よーい、スタート」で撮影が始まる30秒前とか1分前から、沙織里はどういう動きをしているんだろうと考えるようになって、実際にスタートの1分前くらいから沙織里として動くようになったんです。途中から助監督さんがそれに気づいてくださって、逆算してカメラを回してくださるようになって。それに青木(崇高)さんもずっと付き合ってくださったんです。ある意味エチュードみたいな感じだったんですけど、この作品では「よーい、スタート」からお芝居を始めることができなくなってしまって。

ーーいままで普通にできていたことができなくなったと。

石原:そうなんです。いままでできていた“切り替え”ができなくなってしまって。だからカットがかかったあとも、自分が落ち着くまでお芝居を続けていたりしました。それにずっと付き合ってくださった青木さんには本当に感謝ですね。

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