広瀬すず×松山ケンイチの期待値が高すぎる 『クジャクのダンス、誰が見た?』は新境地に?

広瀬すず×松山ケンイチの期待値が高すぎる

 2025年1月にスタートするドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)が楽しみで仕方がない。主演が広瀬すずで、共演に松山ケンイチ。しかも原作は浅見理都による同名マンガで、ジャンルとしてはヒューマンクライムサスペンスである。このへんのいくつかの情報を得ただけでももう、2025年が楽しみになるというものだろう。

 本作は、クリスマスイブの夜に元警察官の父親を殺された娘が、遺された手紙を手がかりに真相に迫っていくさまを描くもの。タイトルになっている「クジャクのダンス、誰が見た?」はインド哲学の一節であり、本作においては“たとえ誰も見ていなかったとしても、犯した罪から逃げることはできない”という意味を持つらしい。

 簡単にあらすじに触れておこう。母を早くに亡くした主人公・山下心麦(広瀬すず)は、元警察官の父とふたりだけで生きてきた大学生だ。どんなときも自分を信じてくれた心優しい父と屋台のラーメンを食べることにささやかな幸せを感じるような純真な性格の持ち主である。

 ところがそんなふたりに突然の別れがやってくる。殺人犯として逮捕されたのは、22年前に父が一家惨殺事件の犯人として逮捕した人物のひとり息子。さらに父が遺した手紙には「冤罪」の文字が記されている。そうしてやがて、現在と過去のふたつの事件が交錯していくのである。

 広瀬がこういったサスペンスドラマで主演を務めるのは、本作がはじめてのことなのだという。これは意外だ。視聴者ごとに広瀬に対するイメージがあるのではないかと思うが、『怒り』(2016年)や『三度目の殺人』(2017年)、『流浪の月』(2022年)といったサスペンス作品で彼女は重要な役どころを演じてきた俳優だ。『なつぞら』(2019年度前期/NHK総合)で朝ドラのヒロインを務めた経験もある広瀬だが、いずれも公開された年を代表する映画作品であり、彼女が演じたのは明るさとは無縁のキャラクターだった。どれも話題作なのでドラマファンの方々も観ているとは思うが、映画ファンにとってはシリアスな役どころでこそ力を発揮してきた存在なのだ。『夕暮れに、手をつなぐ』(2023年/TBS系)で演じた主人公・浅葱空豆のような快活なイメージを広瀬に抱いている視聴者にとっては、新鮮な驚きとともに迎えられることになるかもしれない。

 あらすじを読むかぎり、広瀬が演じる心麦はとってもピュアで心の優しい人物なのだと分かる。そんな彼女が最愛の父を奪われ、平和な日常は崩壊していく。広瀬はこの“落差”を表現しなければならない。難しい役どころだ。しかし『怒り』の時点でこういった変化を演じられる演技者なのだとすでに証明している。『クジャクのダンス、誰が見た?』が世に出ることで、この力をお茶の間でも示す機会になるのではないだろうか。

 2025年の広瀬は『ゆきてかへらぬ』『片思い世界』『遠い山なみの光』という3本もの主演映画の公開が続き、さらにはヒットメーカー・大友啓史監督とタッグを組んだ『宝島』も公開される。『クジャクのダンス、誰が見た?』のオンエアが彼女の一年にはずみをつけることにもなるのではないだろうか。しかも先述した“落差”の表現から、広瀬はそのさらに先へと進むことにもなるはず。なぜなら父を失った心麦は、事の真相に迫っていくからだ。悲しみに打ち拉がれる心麦のその後の人生を、広瀬はどのように私たちに提示してみせるのだろうか。

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