野木亜紀子は戦後史とどう向き合う? 『海に眠るダイヤモンド』は黄金チームの挑戦作に
野木亜紀子は、『アンナチュラル』のシナリオブック(著:野木亜紀子、河出書房新社)のあとがきで、塚原あゆ子の演出の魅力を「端的に言うと『スタイリッシュかつエモい』、これにつきます」と書いている。
確かに塚原の演出は、スピード感があってテンポが良く、ユニークなガジェットを多用する凝った映像とが満載だ。しかし、そうでありながら、役者の魅力を見事に引き出し、情感のあるヒューマンドラマをしっかりと見せてくれる。
野木亜紀子脚本の3作は、都市の風景を切り取ったクライムサスペンスということもあってか、塚原演出の「スタイリッシュ」な部分が、前面に打ち出されていたように感じた。
対して『Nのために』や『最愛』は、田舎の風景を背景にした甘酸っぱくて泣ける青春ドラマが強く印象に残る作品で、塚原演出の「エモい」部分の方が際立っていた。
おそらく、1955年の長崎の端島を舞台にした『海に眠るダイヤモンド』は、『Nのために』や『最愛』のようなエモさが前面に打ち出された、これまでにない野木亜紀子脚本のドラマとなるのではないかと思う。
また、10〜15年の歳月を描いた『Nのために』、『最愛』に対し、『海に眠るダイヤモンド』では70年の物語になるという。そのため、日本の戦後史が主役とでも言うようなスケールの大きな展開になるのかもしれない。
その意味でも、犯罪を通して現代社会の闇を描いてきた過去作とはアプローチの異なる、壮大なヒューマンドラマに仕上がるのではないかと期待している。3人にとっては新たな一歩となる大きな作品となることは間違いないだろう。放送が楽しみだ。
■放送情報
日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』
TBS系にて、10月20日(日)スタート 毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:神木隆之介、斎藤工、杉咲花、池田エライザ、清水尋也、中嶋朋子、山本未來、さだまさし、國村隼、土屋太鳳、沢村一樹、宮本信子、尾美としのり、美保純、酒向芳、宮崎吐夢、内藤秀一郎、西垣匠、豆原一成(JO1)、片岡凜
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、福田亮介、林啓史、府川亮介
プロデュース :新井順子、松本明子
スーパーバイザー:那須田淳、岡崎吉弘
音楽:佐藤直紀
編成:中井芳彦、後藤大希
製作:TBSスパークル、TBS
制作協力:NBC長崎放送
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