鈴鹿央士は“よく見る存在”であり続ける 『silent』『嘘解きレトリック』などにみる飛躍ぶり

鈴鹿央士は“よく見る俳優”であり続ける

 さて、鈴鹿は俳優デビューを果たしてからまだ5年の存在だと冒頭に記したが、彼のキャリアのはじまりは、ほとんど“ロケットスタート”といえるものだった。

 彼をこの世界に引き入れた存在である広瀬すずが主演の朝ドラ『なつぞら』(2019年度前期/NHK総合)で大衆を前に演技を初披露し、その直後に封切られた映画『蜜蜂と遠雷』では松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィンといった先輩たちと肩を並べ、鈴鹿は天才ピアニストを軽やかに演じてみせた(ちなみに撮影は『蜜蜂と遠雷』のほうが先である)。そこからさらに『おっさんずラブ-in the sky-』(2019年/テレビ朝日系)の放送と『決算!忠臣蔵』(2019年)の公開が続き、この2019年下半期は新人俳優の鈴鹿がさらったものだった。

 出演作の放送や公開が続き、“よく見る存在”になる者は少なくない。しかし、“よく見る存在”であり続けることは難しい。けれども鈴鹿はそんな存在であり続けるばかりか、『silent』(2022年/フジテレビ系)の戸川湊斗役でトップに躍り出てみせた。同作が若い世代を中心に熱狂を生み、社会現象を巻き起こしたことはいまだに鮮明に覚えている。彼が立ち上げたキャラクターは、私たちが日々を過ごしている社会のどこかで確実に生きているのであろう、リアルで等身大なものだった。“私たちのすぐ隣にいる人物”だとも言い換えられるだろう。つまり、親しみやすさがあった。

 俳優デビューから『silent』まで、そして『silent』から『嘘解きレトリック』まで鈴鹿は、“よく見る存在”のトップを走り続けている。そのキャリアを俯瞰してみると、非常に豊かなものであることが分かるだろう。しかも1作ごとに彼は確実に大きな飛躍を果たしてもいる。恐るべき才能の持ち主であることは間違いない。そして特別な運や縁を引き寄せる力も持っているはず。しかし、才能・運・縁だけを頼りに走っていては、どこかで必ずつまずいてしまうもの。『嘘解きレトリック』では彼の努力というものがハッキリと見られるのではないだろうか。演じるうえでの技術が必要とされる作品になりそうだからである。

■放送情報
『嘘解きレトリック』
フジテレビ系にて、10月7日(月)スタート 毎週月曜21:00~21:54放送
※初回15分拡大(21:00~22:09放送)
出演者:鈴鹿央士、松本穂香、味方良介、片山友希、村川絵梨、若村麻由美ほか
原作:都戸利津『嘘解きレトリック』(白泉社・花とゆめコミックス)
脚本:武石栞、村田こけし、大口幸子
音楽:菅野祐悟、眞鍋昭大
主題歌:eill「革命前夜」(PONY CANYON)
演出:西谷弘、永山耕三、鈴木雅之
プロデュース:鈴木吉弘、狩野雄太
制作協力:AOI Pro.
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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