『虎に翼』戸塚純貴が透明化された人々の代弁者に 朝ドラで“セクシュアリティ”を扱う意義
ムードメーカーでもある轟は、いつも私たちを笑顔にしてきた。そんな彼の幸せを誰もが願っているだろう。しかし、そうもいかないのである(「幸せとは何か?」という問いはここでは置いておいて)。
先述しているように、轟は時間の経過とともに変化してきた。そして第20週の第100話では、彼のパートナーである遠藤時雄(和田正人)が登場。困惑する寅子に対し、「俺がお付き合いをしているお方だ」と明かした。
第11週の第51話では、大切な学友であった花岡の死に際し、轟が胸中を吐露する場面があった。あの頃の彼が自身のセクシュアリティに自覚的であったかどうかは明示されていなかったが、おそらく無自覚だったのではないかと思う。それこそ、時代が時代だった。「男は男らしく、女は女らしく」という時代だった。そしてそんな考えの陰で、透明化された人々が多くいた。人前ではいつも真っ直ぐに明るく振る舞う轟である。人前では見せない彼の本当の心の動きは、果たしてどのようなものだったのだろう。
寅子は恋人である星航一(岡田将生)からプロポーズをされ、「結婚」というものに向き合っていくことになる。それに対して轟と遠藤は、どれだけお互いを想い合っていたとしても、そこに法的な「誓い」を立てることができない。いままで寅子にも見えていなかった法律の壁だ。そしてこの壁に隔てられ、透明化された人々の存在を知るに違いない。轟がそんな彼ら彼女らの代弁者のひとりとなるのだろう。
大切に扱わなければならない、今日においても非常に大きなテーマだ。戸塚が背負っているものは大きい。演じるうえで求められるものは、これまでとはまた変わってくるのではないだろうか。大切に見守りたい。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK