『虎に翼』岡田将生の星航一はなぜ魅力的なのか “3つのパート”を絡ませる脚本構成力
朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)は、気づきの多いドラマだ。そして稀有なドラマでもある。今週放送の第20週だけを鑑みても、全く異なる3つのパートを同時進行で描いている。
1つ目は家パート。直明(三山凌輝)と恋人・玲美(菊池和澄)の結婚後の同居問題を巡る花江(森田望智)と直明の対立を、「家族裁判」を通して描くことで、変わりつつある結婚観と、花江への子どもたちの思いを描いた。
2つ目は寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)の恋愛パート。ただ「永遠を誓わない愛を試す」つもりが、プロポーズされたことに当惑する寅子を通して、「恋愛とは? 結婚とは?」を問う。
3つ目は法曹パート。新潟編を経て東京地方裁判所に赴任した寅子ばかりでなく、寅子弁護士時代の上司である弁護士・雲野(塚地武雅)、岩居(趙珉和)の再登場、さらには満を持して弁護士となったよね(土居志央梨)と轟(戸塚純基)らが集結して、実際にヒロインのモデルである三淵嘉子が担当裁判官を務めた「原爆裁判」に向かっていく様は、時代背景として「第五福竜丸事件」の言及がされるなど、解説の分かりやすさ含め、しっかり描こうとする意気込みが感じられる。
3つのパートはそれぞれ独立しているように見えて、密接に絡み合う。大人である寅子と航一の恋は、特に航一の家族の様子からも分かるように、家族の心に波紋を呼んでいるし、家族と離れることを頑なに拒む直明の心には、寅子が問う「そもそもあの戦争とは何だったのか」という問いに直結する、戦争によって生じた心の傷がある。
さらには終盤に轟が恋人の遠藤(和田正人)を寅子に紹介することで、恋愛パートで描かれている「結婚とは?」に新たな視点が加わる。この、ありとあらゆることが詰め込まれつつ、そのすべてが心地よく機能していることは、新潟編においても同じだった。寅子と優未(竹澤咲子/毎田暖乃)親子の土台作りと、航一との恋愛を丁寧に描きながら、涼子(桜井ユキ)と玉(羽瀬川なぎ)を取り巻く環境、さらには、寅子が担当する裁判を通して、朝鮮人差別をはじめとするあらゆる差別の存在を描いた。それと同時に、戦前は使用人の立場だった玉が涼子と親友になることや、花江の実家の女中だった稲(田中真弓)が花江と寅子と酔ってはしゃぐ姿を通して、時代の変化と彼女たちの「平等」の実現をさりげなく描いていたのも秀逸だった。
さて、いよいよ佳境である航一と寅子の「永遠を誓わない、だらしがない愛」の行く末であるが、最初の夫である優三(仲野太賀)の素晴らしさを知っている視聴者でも受け入れざるを得ないその恋愛の、実に興味深い点は、ストレートに寅子を「好き」だと伝える航一の良さと、本来ならその「好き」に流されるところを「はて?」と留まることのできる寅子の対比的な面白さなのではないだろうか。