『虎に翼』伊藤沙莉演じる寅子は稀代の“惚れさせ屋” 不器用ながら重ねてきた恋愛

『虎に翼』寅子は稀代の“惚れさせ屋”だ

 航一(岡田将生)は寅子への好意を、一緒にいると自分の心の蓋がつい外れてしまうと表現した。航一は誰にでも公平であろうとする真面目な裁判官としての寅子も、他者との溝を少しでも埋めたい寅子もそばで見てきた。航一は寅子のそういう側面も好きなようだが、さらに彼を惚れさせたのは、寅子の無邪気さや素直さではないだろうか。航一の父・星朋彦(平田満)の本の改稿作業の終盤、「今日でお手伝いも終わりでしょ? なんだかとても寂しくて」と寅子が言った時も、ふと本所の近くにお気に入りの店があることを話し、寅子が「誘ってくださるの!? 嬉しいわぁ」と喜んだ時も、航一は少しハッとして照れくさいような表情を見せた。あたかも「航一さんと一緒にいられて嬉しい」と言っているかのような寅子の言葉や態度はかわいらしかった。それが航一には刺さったのだろう。

 寅子も誰かを惚れさせるたび、自分の心の動きを理解するようになっていった。花岡からは愛されることのむず痒さと温かさを学び、優三との日々は、誰かを愛し愛される幸せを実感できた。だからこそ、互いに愛する子供と亡きパートナーがいた航一との恋は、寅子にとって惹かれる気持ちとは別にブレーキがかかる部分があり、ちょっとぎこちなくなってしまったと考えられる。そんな寅子の気持ちを汲んで「永遠を誓わない、だらしがない愛」を提案し、「ドキドキする今の気持ちを大事にしても罰は当たらない」と説得する航一の言葉には寅子の心のつっかえを取り去るような力もあった。クールな顔をしている航一の内側にある大きな愛情に驚きさえ感じてしまう。

 揺れ動きやすく、間違えやすい寅子に大きな支えが増えた。優未との関係も改善し、裁判官としての経験も積んだ寅子は、ついに再び東京へ。さらにパワフルになった寅子の活躍に期待していきたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、岡田将生、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、桜井ユキ、三山凌輝、毎田暖乃、田口浩正、遠山俊也、望月歩、堺小春、羽瀬川なぎ、岡部ひろき、田中真弓、青山凌大、今井悠貴、和田庵、竹澤咲子、高橋克実
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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