『虎に翼』をサスペンスに変える片岡凜の怪演ぶり ゆくゆくは大竹しのぶのような大物に?

『虎に翼』をサスペンスに変える片岡凜の怪演

 まさか朝ドラがサスペンスやミステリーの様相を呈するとは思わなかった。NHK連続テレビ小説『虎に翼』では、新潟地家裁三条支部の支部長兼判事となった寅子(伊藤沙莉)が数々の刑事事件と向き合っている。この「新潟編」で最も視聴者の注目を浴びているのは、片岡凜演じる女子高生の美佐江だろう。これまでも本作には一癖も二癖もあるキャラクターが数多く登場してきたが、彼女は特に異彩を放っている。

 美佐江は、三条市の大地主・森口(俵木藤汰)の娘だ。東京の大学を目指す優秀な学生で、喫茶ライトハウスで玉(羽瀬川なぎ)から英語を教わっている。初めて寅子と会った時は礼儀正しく、容姿端麗なこともあって妙にオーラがある子という印象だった。書記官の高瀬(望月歩)に無神経な言葉をかけ、トラブルになった森口の娘とは思えなかった人も多いだろう。

 朝ドラでは主人公が一定の地位を確立した時に、弟子やかつての自分と重なる存在が登場するケースが多く、当初は法学部志望ということもあり、美佐江も寅子を慕う後輩ポジションに収まるのかと思っていた。だが、美佐江が「先生は、私の特別です」と寅子に赤い腕飾りをプレゼントした時、妙な感じを覚えたのは筆者だけではないだろう。この時から、片岡の演技には“伏線”があり、美佐江の笑顔には何やら執着めいたものを感じた。

 嫌な予感は的中し、頻発するひったくり事件の窃盗犯が同じ腕飾りをしていたことから、寅子は美佐江の関与を疑う。特別な人にだけ腕飾りを渡しているという美佐江に寅子は、その“特別”がどういう意味なのかを問うのだが、この時の片岡の演技がまた凄まじかった。突如、寅子の目の前で腕飾りを引きちぎった美佐江。その行動もさることながら、いつもと変わらぬ笑顔がより恐怖を煽る。

 その後も美佐江は寅子に変わらぬ態度で接した。何度もじっくり話すチャンスはあったのに、寅子が追及できなかったのは“本能”によるものだろう。それだけ、美佐江の笑顔は相手に忌避感を与えるのだ。しかし、女子高生が男たちに売春を持ちかけ、財布から金を盗む事件にまたもや美佐江が関わっていることを知ると、寅子は意を決して本人を問い詰める。すると、美佐江は「どうして悪い人から物を盗んじゃいけないのか。どうして自分の体を好きに使ってはいけないのか。どうして人を殺しちゃいけないのか」「それがなぜ悪いことに定義されるのか、よく分からない」と寅子に疑問を投げかけた。

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