『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S2ならではの欠陥が 精細を欠くデイモンのサブプロット
『ゲーム・オブ・スローンズ』から始まるシリーズの魅力の1つに権謀術数を巡らす策士たちの暗躍がある。シーズン2第6話では黒装派、翠装派両陣営の2人の策士が対称的に描かれている。“内反足のラリス”(マシュー・ニーダム)はエイモンドに取り入ろうとするが、彼の奸計は心の弱さを抱えた者にこそ効力を発揮するものであり、天下に敵なしと見る摂政王子には通用しない。深山鴉の巣城(ルークス・レスト)の合戦で瀕死の重傷を負って以後、昏睡状態にあったエイゴンが目を覚ますと、ラリスはその枕頭に立った。エイゴンの生殺与奪は今やエイモンドに握られている。生まれ持った自身の障害を語り、虐げられてきた者の共感を示すラリスにはこれまで見せたことのない真実味と、孤立無援の王を精神的に支配しようとする狡猾さが共存している。“内反足のラリス”は自身を見くびる者を謀ることで乱世を生き延びてきたのだ。対面する相手によって身体の傾きを変え、心理的優位性を表現するマシュー・ニーダムのフィジカルが面白い。
片や、黒装派でレイニラを支えるのはミサリアだけだ。デイモンとカラクセスの消息は知れず、戦況が不利な今、自信を失った女王に「あなたには私がいます」とミサリアは言葉をかける。遠くエッソスに生まれたミサリアもまた父からの虐待に身体を傷つけられた者であり、唯一対等な存在として認めてくれたレイニラこそが女王に相応しいと信念を語る。血統でも権力でもなく、自身の人間性を初めて支持されたレイニラの感動はアメリカ大統領選挙のターニングポイントを迎えた日のオンエアとして意義深いものを感じる一方、レイニラの資質と人間性もまた未知数である。彼女の背中に添えられたミサリアの優しい手に、ダンサーとして培われてきたソノヤ・ミズノの身体表現が光る。ミサリアの造形は同じく貧民から成り上がり、時に非道な謀略も辞さない理想主義者として描かれながら、シリーズ最終盤で消化不良に終わったヴァリス公のやり直しと言えるかもしれない。
シースモークに何者かが騎竜しているとの報告が入り、レイニラは急ぎシアラックスで出立する。また谷間(ヴェイル)にはどうやら野生のドラゴンが存在するようだ。“双竜の舞踏”はウェスタロスにおける全ドラゴンを投入した総力戦へと発展し、後のデナーリス・ターガリエンが現れる時代まで、この神の化身を地上から絶滅させるに至るのである。
■配信情報
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン シーズン2』
U-NEXTにて配信中(毎週月曜1話ずつ配信)
出演:エマ・ダーシー(CV:早見沙織)、オリヴィア・クック(CV:坂本真綾)、マット・スミス(CV:津田健次郎)、トム・グリン=カーニー(CV/武内駿輔)、スティーヴ・トゥーサント(CV:大塚明夫)、イヴ・ベスト(CV:井上喜久子)、ユアン・ミッチェル(CV:新祐樹)、ファビアン・フランケル(CV:諏訪部順一)、ソノヤ・ミズノ(CV:種市桃子)、リス・エヴァンス(CV:大塚芳忠)、ハリー・コレット(CV:大塚剛央)、ベサニー・アントニア(CV:櫻庭有紗)、フィービー・キャンベル(CV:のぐちゆり)、フィア・サバン(CV:内田真礼)、ジェファーソン・ホール(CV:遠藤大智)、(CV:武藤正史)
共同企画・製作総指揮:ジョージ・R・R・マーティン
共同企画・ショーランナー・製作総指揮:ライアン・コンダル
製作総指揮:サラ・ヘス、 アラン・テイラー、 メリッサ・バーンスタイン、 ケヴィン・デラノイ、ロニー・ペリステア、ヴィンス・ジェラルディス
原作:ジョージ・R・R・マーティン『炎と血』
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