『しかのこのこのここしたんたん』の破天荒な展開に釘付け! アニメならではのギャップも
7月から放送がスタートしたTVアニメーション『しかのこのこのここしたんたん』の話題が世の中を席巻中だ。放送前からオープニング曲「シカ色デイズ」に合わせて踊る人がネットに続出していたが、いよいよ始まったアニメーションも、元ヤンキーで今は高校の生徒会長を務める虎視虎子(こしたん)が、頭にシカのツノを生やした鹿乃子のこ(のこたん)という転入生とシカ部を作って、ドタバタとした日常を繰り広げる破天荒な展開で視聴者を翻弄している。
『しかのこのこのここしたんたん』。このタイトルを、1年前にスルリと口にできる人がどれだけいただろう。東京ビッグサイトでAnimeJapan2024が開催された今年3月の時点でも、頭にツノを生やした女の子が「君もシカにならないか」という看板を持って立っていたのを見かけ、シカが出るアニメが始まるらしいと思わせた程度だった。それがどうだ。5月28日に「シカ色デイズ」のイントロ耐久1時間動画が配信され、リズミカルに繰り返されるタイトルを何回何十回何百回と聞かされたことで、すっかり脳に染みついてしまった。
耐久動画のYouTubeでの再生回数は7月23日時点で脅威の770万回。何が起こっているのだと驚いていたら、さらに驚く現象が発生した。7月4日に完成版のオープニング映像として「シカ色デイズ」が配信されて、たちどころに再生回数1000万回を突破してしまったのだ。7月23日の時点ではさらに伸びて1684万回。冒頭に繰り出される「ぬん」という言葉が、世界の流行語になるのも確実と言いたくなる状況だ。
「シカ色デイズ」の面白さは冒頭だけではない。「カラスは真っ白」というバンドでボーカルのほかに楽曲作りも担当し、シュールな世界を聞かせてくれていたやぎぬまかなが作詞した歌詞が、fhánaのギタリストだった和賀裕希による曲に乗って響いて興味をグイッと引きつける。そこで繰り出されるコミカルだったりハードだったりと展開の激しいアニメーションが、たった1分半で観る人を作品世界へと引きずり込む。
その先で繰り広げられる本編がこれまたシュールでナンセンスでエキサイティング。何が起こるのかに迷わされ、何が起こっているのかと驚かされること確実だ。
たとえば第1話「ガール・ミーツ・シカ」の冒頭。こしたんがスカートのプリーツを乱さず、青いセーラーカラーも翻さないようにと某少女小説が原作のアニメのヒロインみたいな佇まいで登場した時点で含み笑いが浮かぶ。そして直後に、電線にツノをひっかけてぶら下がる女子が現れ、こしたんともども一体なにごとかと思わせる。
そして助けた女子が、のこという名でこしたんの通う高校に転入生として現れ、教室に入ってくるシーンでさらなる驚きのビジョンを目の当たりにする。頭の両側に伸びたツノが教室の扉と壁に引っかかった時、のこたんは扉を吹き飛ばし壁をぶち壊して教室の中へと進むのだ。
このシーン自体は、おしおしおがマンガポケットで連載している原作の漫画にも存在するものだが、1発ギャグのようなそのシーンをアニメでは、スローモーションで動かしながら、片側で扉がひしゃげてガラス窓が飛び散り、もう片方で壁がえぐられ破片が飛んで生徒の顔を直撃して血飛沫を上げさせるスプラッターな描写へと変えてきた。
あのツノはどれだけの硬さがあるんだ。そもそもどうして少女にシカのツノなんか生えているんだ。そうした疑問しか浮かばないシチュエーションであるにもかかわらず、誰も疑問を抱かず壁の破片が当たったことすら気にせずに、のこたんを迎える生徒たちがどうにもシュール。こしたんだけがこれはヘンだと反応している状況とのギャップが笑いを誘う。