『【推しの子】』第14話はアニオリ演出の成功例だ OP&ED映像に込められた意味を考察

『【推しの子】』第14話はアニオリの成功例

 アニメ『【推しの子】』第14話が、「アニオリ演出の成功例」として多くのファンから高い評価を得ている。「原作問題を扱う原作付きアニメ」という、なかなか難しいポジションの作品でありながら、巧みな演出でアニメオリジナル要素を効果的に取り入れている『【推しの子】』。とはいえ、ストーリーラインを今後大きく変更する可能性はゼロとは言えないものの、現時点ではアニメ版もかなり原作準拠で物語が進行していることが本作の特徴でもある。

 前提として、アニメ化における原作からのストーリー改変が、絶対的な悪影響をもたらすわけではない。しかし、原作問題そのものを扱う本作において、アニメ版が原作とどのように向き合うかは、視聴者にとって大きな関心事の一つとなっている。

 そんな中、アニメ版として見事な着地を見せたのが第14話だ。

【推しの子】第十四話『リライティング』WEB予告

 「東京ブレイド」の舞台化に際し、脚本のやり直しを求めた原作者の鮫島アビ子。そんな彼女の漫画家としての師匠とも言える存在は、『今日は甘口で(今日あま)』の作者・吉祥寺頼子だった。両者が心の奥で共有している、好きな作品をメディアミックスによって“汚される”ことの痛みが描かれる一方で、それだけではない。

 この第14話の落とし所がやや原作と印象を変えたのは、最後に追加された演出だ。『今日あま』での有馬の演技を観て、瞳を煌めかせるアビ子の姿と、そこに重なるような「あのドラマ、私はやって良かったと思ってる」という頼子の言葉。時間にして数秒ではあるものの、アニメオリジナルの演出により、原作の本質を損なうことなく、メディアミックスのプラスの可能性を示す前向きなメッセージが付け加えられている。

 原作を脚色するというのは、繊細な問題でもある。その一方で、脚本家であれ、役者であれ、それぞれのポジションのプロフェッショナルが、同じ方向を向いて頑張ろうとしているケースがほとんどであることも事実だ。だからこそ、脚本の仕上がりも大切だが、その先にある役者の演技も作品を良い方向へ“変える”可能性があることを示した演出になっている(もちろん逆も然りであるが)。これまでのストーリーからも示唆されているように、あかねとかなの演技対決がメインになる第2期で、これからの展開への「橋渡し」としても非常に秀逸だ。

 さらに、会話が上手くないアビ子が、泣きながら漫画を描き、頼子に本音をぶつけるシーンも印象的だった。演出として、アップになった手元の原稿が度々映り込むことで、2人が共有しているものが言葉以上に創作であることも感じさせられたのではないか。

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