『【推しの子】』で“見つかった”石見舞菜香の躍進 黒川あかねとして放つ演技の凄み

『【推しの子】』で見つかった石見舞菜香

 『【推しの子】』の「恋愛リアリティショー」の中で、黒川あかねはアクアに対して仕事上のパートナーという立場から、本気の好意を抱くように変わっていく。アニメでもそうした感情の変化はしっかりと感じ取れる。アクアを演じる大塚剛央の、本心を表に現さずアイが殺害された原因を虎視眈々と探ろうとする抑えた演技に徹しているのと対称的に、感情が乗ってその好意をうかがわせる。

【推しの子】海の日2024【有馬かな&黒川あかね】

 TVアニメが第2期に入り、「2.5次元舞台編」がスタートした今、黒川あかねはアクアと同じ『東京ブレイド』という舞台に立って、鞘姫という役を演じることになる。原作ではある意味“負けヒロイン”として目立たない役が、舞台ではもう少し勝ち気な女性となっていることへの疑問を抱きつつ、演出家が求めるような演技を稽古の場でしてみせる。その演技はある意味で石見舞菜香らしくないとも言えるものだが、しっかりと聞かせてくれるところにさすがといった印象が浮かぶ。

 能登麻美子も『宇宙よりも遠い場所』で藤堂吟のような少しやさぐれた女性を演じ、早見沙織も『RWBY』シリーズでルビー・ローズという勝ち気で活発な少女を演じてみせる。声優の演技が幅広いのは言うまでもないことで、石見舞菜香も同じように演技者として『【推しの子】』の上で黒川あかねという演技者を演じきっているだけなのだ。それはそれでとてつもなくすごいことなのだが、そうは感じさせないところもまた演技者の矜持なのかもしれない。

 「2.5次元舞台編」には、天才子役として活躍していた経験を持つ有馬かなも同じ『東京ブレイド』の舞台に立つことになる。そこで黒川あかねとはまた違った役への考え方を口にして共演者を戦かわせる。そこで実際の演技が伴っていなければTVアニメを観る人も興ざめしてしまう。有馬かなを演じる潘めぐみも、石見舞菜香と同じようなプレッシャーを感じながら臨んでいることだろう。

 石見舞菜香の方は『【推しの子】』の第2期と同じ7月スタートのTVアニメ『菜なれ花なれ』で、大谷穏花という役を演じてかわいらしいが活発さは持っている女子高生を見せてくれている。10月4日公開の長井龍雪監督によるアニメーション映画『ふれる。』では、浅川奈南という20歳の元服飾専門学生を演じているというからこちらも目を離せない。長井監督の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で、本間芽衣子を演じる茅野愛衣の演技に惹かれ声優を志した石見舞菜香にとって、本気中の本気を持って臨んだだろう作品だけに、どれだけの演技を見せてくれるかが今から気になって仕方がない。(※)

参考

※ https://moviewalker.jp/news/article/138143/

■放送情報
『【推しの子】』
TOKYO MXほかにて、毎週水曜23:00〜放送
ABEMAにて、毎週水曜23:00〜地上波同時・単独最速配信
原作:赤坂アカ、横槍メンゴ(集英社『週刊ヤングジャンプ』連載)
キャスト:大塚剛央(アクア)、伊駒ゆりえ(ルビー)、潘めぐみ(有馬かな)、石見舞菜香(黒川あかね)、大久保瑠美(MEM ちょ)、内山昂輝(姫川大輝)、前田誠二(鳴嶋メルト)、小林裕介(鴨志田朔夜)、佐倉綾音(鮫島アビ子)、伊藤静(吉祥寺頼子)、鈴村健一(雷田澄彰)、小野大輔(GOA)、志村知幸(金田一敏郎)、高橋李依(アイ)
監督:平牧大輔
助監督:猫富ちゃお、仁科くにやす
シリーズ構成:田中仁
キャラクターデザイン:平山寛菜
サブキャラクターデザイン:澤井駿、渡部里美、横山穂乃花
総作画監督:平山寛菜、渡部里美、横山穂乃花、稲手遥香、監物ケビン雄太
アクションアニメーター:あもーじー
メインアニメーター:早川麻美、水野公彰、室賀彩花
美術監督:宇佐美哲也(スタジオイースター)
美術設定:水本浩太(スタジオイースター)
色彩設計:石黒けい
撮影監督:桒野貴文
編集:坪根健太郎
音楽:伊賀拓郎
音響監督:高寺たけし
音響効果:川田清貴
アニメーション制作:動画工房
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
公式サイト:https://ichigoproduction.com/
公式X(旧Twitter):@anime_oshinoko

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