『新宿野戦病院』橋本愛演じる南舞が気になって仕方ない 主演・仲野太賀との“因縁”も
“クドカン”こと宮藤官九郎が脚本を手がける『新宿野戦病院』(フジテレビ系)はクセの強いキャラクターたちが入り乱れる作品だが、あなたがもっとも気になっているのは誰だろうか。
筆者は断然、本作においてヒロインのポジションにあたる南舞である。演じているのは橋本愛。真っ直ぐだがどこかミステリアスな彼女が、どうにも気になって仕方がないのである。
本作は、さまざまなバックグラウンドを背負う者たちの人生が交差する新宿・歌舞伎町を舞台とした“救急医療エンターテインメント”だ。古びた「聖まごころ病院」には特別な事情を抱えた患者たちが次から次へとやってきて、この土地ならではの人間模様を紡ぎ出している。
そんな本作で橋本が演じる舞は、NPO法人「Not Alone」の新宿エリア代表を務める人物。優しい心の持ち主で、困っている者を見かけると放っておけない性分だ。命はすべて平等であり、誰しも人権は保障されるべきだという信念を彼女は持っている。と同時に、この想いの裏には何か秘めているらしい。それはやがて明かされるのだろうが、やはり真っ直ぐでありながらミステリアスである。
とはいえ本作の主人公は、金もうけ主義の美容皮膚科医・高峰享(仲野太賀)と、軍医経験を持つ女医のヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)。2人を囲む面々もまた、誰も彼も個々のキャラクターが立っている。そう、クセが強い。彼ら彼女らが集まると一気に騒がしくなる。舞もこの一員に数えられる人物だが、その個性に関して思い切って言ってしまえば、彼女は平凡である。他の者たちが医者などでありながら利己的で自己主張が激しいのに対し、彼女はどこまでも利他的な人物なのだ。
ダブル主演の仲野と小池を筆頭に、本作にはクドカン作品らしい個性的な俳優陣が揃っている。ここに橋本が並んでいることに何ら不思議はない。彼女は自身の代表作である朝ドラ『あまちゃん』(2013年/NHK総合)と大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019年/NHK総合)でクドカン作品を経験しているし、いまさらそのフィルモグラフィーを列挙せずとも、彼女が若手世代を代表する俳優だということに誰も異論はないだろう。実際、2018年公開の『ここは退屈迎えに来て』では、門脇麦や成田凌といった同世代の俳優たちとともに織り成す群像劇を、主役として率いた実績もあるのだ。