ダニエル・ラドクリフ、トニー賞受賞の快挙 『ハリポタ』以降の“堅実で愉快な”俳優人生

ダニエル・ラドクリフ、癖のある役選びの理由

 筆者が特に好きなのは、スイス・アーミー・ナイフのような、多機能な役割をする“腐りかけた死体”を怪演した『スイス・アーミー・マン』(2016年)。あまりにも奇想天外なキャラクターを嬉々として演じているラドクリフの姿に、「あのハリーがこんな役を……」と驚きつつ、大爆笑しながら楽しめる映画だ。

 バイオレンス・アクション・コメディ『ガンズ・アキンボ』(2019年)では、両手に拳銃を固定された状態で強制的にデスゲームに参加させられる、うだつの上がらないゲームプログラマー役を好演。あえて、ハリー・ポッターのような好感の持てる人物ではないキャラクターを選んでいるように見える。

 サンドラ・ブロック、チャニング・テイタム、ブラッド・ピットらと共演し、ブロック演じる主人公を誘拐する謎の大富豪を演じた『ザ・ロストシティ』(2022年)でも、ラドクリフの個性的な怪演を堪能できる。

 そして極めつけは、人気パロディ歌手のアル・ヤンコビックに扮した伝記映画『こいつで、今夜もイート・イット ~アル・ヤンコビック物語~』(2022年)。ヤンコビック本人も、まさかラドクリフが自分を演じてくれるなんて思ってもみなかったのではないだろうか。ヤンコビックは脚本にも参加しており、多くの部分が創作だったり、誇張されていたりするのだが、ラドクリフは予想以上に役にハマっていて、コミカルに体現してくれている。

 子役からスターになり、34歳になった現在は、好きな作品で好きな役を演じる自由を満喫しているラドクリフ。トニー賞を受賞する実力派であり、転落や破滅することなく堅実に俳優業を歩んでいる彼の、今後の活躍も楽しみでたまらない。

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