『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』続編映画としてなぜ異質? 監督の気概を読む
ひとくちに続編と言っても、そのパターンはいろいろだ。スター俳優が長い時間をかけて絶対的ヒーローを演じ続ける『インディ・ジョーンズ』や『ミッション:インポッシブル』のようなシリーズもあれば、ジェームズ・ボンドというキャラクターを何人もの俳優たちが演じてきた『007』のようなシリーズもある。
主人公を代替わりさせて、スカイウォーカー家の血脈を描き続けてきた『スター・ウォーズ』もあれば、主人公ダニエルをさしおいてパート4では師匠のミヤギだけ登場する『ベスト・キッド』のような変則パターンもある。地獄のようなボードゲームで遊べば『ジュマンジ』だし、車が爆走すれば『ワイルド・スピード』だ。
ホラー映画で最も多いのが、共通の悪役が続投するパターン。『13日の金曜日』のジェイソン、『エルム街の悪夢』のフレディ、『羊たちの沈黙』のレクター博士……。これがパニック映画になると、敵は個体ではなく総体となる。サメが襲いかかる『ジョーズ』、巨大蛇が大暴れする『アナコンダ』。ティラノサウルスやヴェロキラプトルといった肉食恐竜が襲いかかる『ジュラシック・ワールド』シリーズは、この系譜に連なる作品といえるだろう。
5月31日に『金曜ロードショー』で地上波初放送される『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、『ジュラシック・ワールド』、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』と続いてきた3部作の完結編。前作から4年が経ち、人間と恐竜が共存を余儀なくされた世界で、オーウェン(クリス・プラット)とその恋人クレア(ブライス・ダラス・ハワード)の冒険が三たび繰り広げられる。
そして『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、非常に風変わりな映画だ。作品そのものではなく、その立ち位置が奇妙なのである。『ジュラシック・ワールド』3部作は、もちろん『ジュラシック・パーク』の成功を受けて作られたシリーズだ。だが『ジュラシック・パーク』のスピンオフとして『ジュラシック・ワールド』が存在しているという訳でもなく、かといって直接的な続編という感じでもない。
確かにジュラシック・ワールドを建設したマスラニ・グローバル社は、かつてジュラシック・パークを創り上げたインジェン社を買収したという設定になっているし、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のラストには『ジュラシック・パーク』のメインキャラクターであるマルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)が登場したりする。緩やかな関連性は認められるものの、かといってそれ以上の補完関係もない。『ジュラシック・パーク』という大きな流れのなかに『ジュラシック・ワールド』が鎮座している、とでも言うべき世界観なのである。
踏襲されているのは、
①最新のテクノロジーで恐竜を現代に蘇らせる
②テーマパークをつくって一儲けしようとする
③コントロールしきれずに恐竜が暴れ出す
④人間が次々に食べられる
⑤ちょっとだけ反省したり、しなかったりする
⑥恐竜が自然繁殖する
というお約束だけ。だが驚くべきことに『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』には、旧シリーズのレジェンドたち……古生物学者のグラント(サム・ニール)、古植物学者のサトラー(ローラ・ダーン)、数学者のマルコムが勢揃いして、新シリーズのオーウェン&クレアと共闘する。緩やかに繋がっていた世界線が、いきなりダイレクトに交わってしまったのだ。
レジェンドたちにとっても新シリーズに参加することは宿願だったらしく、特にサトラーを演じたローラ・ダーンは「エリー・サトラーには戻ってきてもらわなきゃ。彼女はいつも窮地を救ってくれるんだから!」とコメント。(※1)新旧スターが揃い踏みする、オールスター映画となった。
『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は、『ジュラシック・ワールド』シリーズの3作目であると同時に『ジュラシック・パーク』シリーズの6作目でもあるという、極めて特異な作品なのである。