『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』20年越し大ヒットの意義 往年の名作に眠る可能性

『SEED FREEDOM』大ヒットの意義

20年前のコンテンツでも戦える可能性を示した

 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、20年前の作品でも大きなヒットを作れることを証明したという点で意義がある。

 先に言及したように『ガンダムSEED』は『ガンダム』という巨大IPの一員であり、常に何らかのコンテンツ展開があったわけだが、それでも『呪術廻戦』や『僕のヒーローアカデミア』のような現役バリバリの作品とも言えない。20年前くらい前の他の人気作品にも再びチャンスがあってもおかしくないのかもしれないと、思わせるには充分な結果を残しただろう。

 実際、これくらいの年月が空くと、往時のファンには懐かしさという訴求力を持ちながら、同時に若い世代にとっては新規の作品としてアピールできる可能性がある。一言でいうと「二世代コンテンツ」になれる可能性がある。

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

 そして、作り手側の世代変化もこうした企画が成立する要因にもなり得る。実写でも、『シティーハンター』や『幽☆遊☆白書』といった企画が今年、話題になったが。これも80年代・90年代に一世風靡した作品だ。時を経たからこそ企画されるものもあるということだ。『シティーハンター』で主人公を演じた鈴木亮平は、少年時代に原作マンガを呼んでいた世代だと思うが、そういう世代が今作り手の中核になっているので、往年の名作を自ら手掛けたいという人が作り手世代になっているという面もある。

 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の場合、福田監督はテレビシリーズを手掛けた本人だが、スタッフには小さい時に『ガンダムSEED』を観ていたファン世代がすでに入っているのだそうだ。(※3)

 なので、たとえ今は制作がとん挫してしまった企画があったとしても、ファンはとりあえず20年くらい待ってみてもいいかもしれない。自分と同世代の人間が意思決定権を持ち、かつてハマった作品をやりたいと考えることがあるかもしれないのだから。

松竹もアニメシフトを鮮明にするか

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

 本作を配給した松竹についても触れておきたい。東宝・東映と並んで邦画の大手3社を言われる松竹は、近年、アニメ映画を中心にメガヒットを出している二社と比べて、アニメの戦略に出遅れていた印象を持つ人もいるかもしれないが、今作のヒットによってそういうイメージを払拭したのではないかと思う。

 実際、近年松竹も多くのアニメ映画を配給しており、アニメシフトを鮮明にしていた。2022年から2023年にかけて、『かがみの孤城』などの長編と、テレビシリーズの劇場版『映画 ゆるキャン△』『劇場版 Free!-the Final Stroke-』などを10億円レベルのヒットに導いており、『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪』のシリーズ2作は20億円近い成績を記録している。

 今年も、今後『がんばっていきまっしょい』や『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編』3部作が控えている。テレビシリーズも今期は松竹が出資している作品が4作品放送中だ。

 『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のヒットで、松竹もこの流れを持続させることになるのではないかと思われる。

参考
※1. https://animeanime.jp/article/2024/02/28/83094.html
※2. https://febri.jp/topics/g-seed_3/
※3. https://wpb.shueisha.co.jp/news/entertainment/2024/01/26/122041/

■公開情報
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』
全国公開中
声の出演:保志総一朗(キラ・ヤマト)、田中理恵(ラクス・クライン)、石田彰(アスラン・ザラ)、森なな子(カガリ・ユラ・アスハ)、鈴村健一(シン・アスカ)、坂本真綾(ルナマリア・ホーク)、折笠富美子(メイリン・ホーク)、三石琴乃(マリュー・ラミアス)、子安武人(ムウ・ラ・フラガ)、関智一(イザーク・ジュール)、笹沼晃(ディアッカ・エルスマン)、桑島法子(アグネス・ギーベンラート)、佐倉綾音(トーヤ・マシマ)、大塚芳忠(アレクセイ・コノエ)、福山潤(アルバート・ハインライン)、根谷美智子(ヒルダ・ハーケン)、楠大典(ヘルベルト・フォン・ラインハルト)、諏訪部順一(マーズ・シメオン)
監督:福田己津央
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
脚本:両澤千晶、後藤リウ、福田己津央
キャラクターデザイン:平井久司
メカニカルデザイン:大河原邦男、山根公利、宮武一貴、阿久津潤一、新谷学、禅芝、射尾卓弥、大河広行
メカニカルアニメーションディレクター:重田智
色彩設計:長尾朱美
美術監督:池田繁美、丸山由紀子
CGディレクター:佐藤光裕、櫛田健介、藤江智洋
モニターワークス:田村あず紗、影山慈郎
撮影監督:葛山剛士、豊岡茂紀
編集:野尻由紀子
音響監督:藤野貞義
音楽:佐橋俊彦
製作:バンダイナムコフィルムワークス
配給:バンダイナムコフィルムワークス、松竹
©創通・サンライズ
公式サイト:https://www.gundam-seed.net/freedom/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/SEED_HDRP
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@seed_freedom_official

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