s**t kingz 持田将史が大切にしている“やり続けること” 「今日よりも明日は絶対に良くなる」
「昔から未来の自分にだけは期待していた」
――持田さんは35歳で俳優デビューされて、もうすぐ4年が経ちますが、そもそもお芝居にはいつ頃から興味を持たれていたのでしょうか?
持田:子供の頃からドラマや映画は好きだったんですが、自分がお芝居をやりたいと気づいたのは30半ばになってからなんです。そもそも僕はダンスを始めるのも人より遅くて、「職業なんですか?」と聞かれた時に、迷いなく「ダンサーです」と答えられるようになったこと自体、自分の中では想像もしていなかったんですね。でもそうなった頃から、もしかしたら自分の表現方法はダンスだけじゃないのかもと思うようになって。ようやくお芝居をやりたいんだと気づいてからは、もうのめり込んでいきましたね。
――率直にお芝居は楽しいですか?
持田:お芝居が大好きなので、毎回本当に楽しいですよ。ダンスも大好きで、もちろんこれからも続けていきますが、お芝居にしかない力の合わせ方みたいなのがある気がしていて。もともと人と何かをするのが好きなのもありますが、瞬発力が試されるドラマの現場でいろんな人たちと協力し合って、一緒に楽しんだり苦しんだりしながら、少しずつ作品が出来上がっていく感じがたまらないんです。
――これまで持田さんは『半沢直樹』(TBS系)や『エール』(NHK総合)など、大作に出演してこられたので、現場で吸収したものも大きそうです。
持田:どの現場でも勉強になることばかりなんですが、それこそデビュー作が『半沢直樹』って、どんだけ恵まれているんだって話ですよね。本当に素晴らしいチャンスをいただいたなと今でも思っているんですが、同時に主演の堺雅人さんや、賀来賢人さん、今田美桜さんなど、錚々たるメンバーに囲まれて、そのレベルには到底達しない自分の実力を痛感したんです。だからこそ、基本的にはどんなお話も断らず、役名がなかったり出演がセリフ1行しかない役も演じてきました。やっぱりそこでしか得られない経験が必ずあるし、たくさん現場に出て、一流の人たちと一緒に仕事をして、たとえ人の目に映らなくても、そこで全力を尽くすことで学べるものがたくさんあるってことをダンスに散々教えてもらってきたので。これからもいろんな役を演じて、役者としての幅を広げていきたいです。あとなぜか僕が出演するドラマは主人公が途中でどこか別のところに行ってしまうので(笑)、いつか1クールのドラマにフルで出演するという経験もできたらいいなと思っています。
――逆にお芝居での経験がダンサーとしてのお仕事に還元されているなと感じる部分はありますか?
持田:無意識の領域で変化している部分はたくさんあると思うんですが、例えば、お芝居を始める前は、ダンスは基本的にステージ上から一方的にエネルギーを送るものだと思っていたんです。もちろん、それで盛り上がってくれたお客さんから、こちらもエネルギーをもらっていて、コミュニケーションを取っているといえば取っているんですが、ダンスは“見るもの”であり、見られることが前提に作られるもの。対して、お芝居は“覗くもの”じゃないですか。誰かの日常を観客が覗いて、その人が何を考えているかを想像する。そういう風に観客側にいろいろなことが委ねられているのがお芝居だと思うんですよね。だけど、ダンスでもこちらから全てを提供せず、観客が自ら探しに行くような楽しさもあるってことにお芝居を始めてから気づいたんです。きっとそれに気づいているダンサーは他にも沢山いるんだろうけど、そういう人たちのパフォーマンスはまた違っていたんでしょうけど、僕はこちらから120%の力で届けることがエンターテインメントだと思っていた人間なので、あえて全てのパワーを観客に向けないことがエンターテインメントになる瞬間があるということは、お芝居から得た最大の気付きでした。
――s**t kingzのメンバーである小栗さんも『ブギウギ』(NHK総合)や『アンチヒーロー』(TBS系)に俳優としてご出演されていますが、お芝居についてお話しされることもありますか?
持田:小栗は今まさに舞台の稽古中なので(取材当時)、「稽古の方は順調?」みたいな会話をすることはありますね。あと二人で同じ舞台に出演することもあるので、その時はお芝居の難しさについて語り合ったりもします。NOPPO(増田昇太)もドラマに出演しているので、メンバー間で相談し合えるのはすごく嬉しいし、逆にkazuki(濱本和樹)はすごく客観的な目線から的を射た感想をくれるので、とてもありがたいです。
――今回のドラマに対する反応も楽しみですね。
持田:そうですね。今はNOPPOもOguriも舞台の稽古中で、kazukiはYouTubeチャンネルのイベントで全国を回っているので、なんだかんだ会えずにいるので、次に顔を合わせた時にみんなから感想を聞けたらいいなと思っています。
――以前、TVerオリジナルの番組『最強の時間割』にご出演されていた回を拝見したんですが、「18歳からダンスを始めて20年かけてここまでくることができるので、お芝居も20年続けたらすごいことになるんじゃないか」とお話されていた印象的でした。その前向きなパワーはどこからくるんでしょうか?
持田:僕はベースポジティブなんですが、自己肯定感はめちゃくちゃ低い人間なんですよ。実はコンプレックスの塊で、それを隠すために明るく生きているところもあって。だから基本的にいつも現時点での自分が嫌いなんですが、なぜか昔から未来の自分にだけは期待していたんです。それこそダンスで練習さえすれば、今日よりも明日は絶対に良くなるということを教えてもらったからかもしれないですね。伸び率はどんどん落ちていくかもしれないけど、やり続けていれば必ず良くなる。お芝居を始めた時も、最初は伸び率がえぐいんですよ。35歳から伸びていくものがあるって幸せだなと思うし、これからはその伸び率が少しずつ小さくなっていくかもしれないけど、頑張ってれば、明日の自分は今日よりいいはずだし、1年後・5年後・10年後の自分はもっとやばいんじゃない?って思えるんです。きっと、その時もコンプレックスだらけなんでしょうけど(笑)。さらに先の未来にいる自分はもっと良くなっているはずだと信じて生きているんじゃないかなと思います。
――先ほどいろんな役を演じていきたいとおっしゃっていたのも、そこに繋がるんですね。
持田:あと僕は自分のことがあんまり好きじゃないから、自分以外の誰かを演じられる時間が幸せなんですよ(笑)。とはいっても結局、自分じゃない誰かを演じていても自分なんですけどね。そこが難しいところで、だからやっぱり自分が出演したドラマを観ていても、その役の中に自分の嫌いな面が見えた瞬間に「ウッ」ってなることも未だにあります。ただいろんな人間を演じることで、自分の嫌いな面も役の力を借りて少しずつ軌道修正していければいいなと思います。
――そういった意味では、今回演じる赤塚はご自身とかなり乖離があるんじゃないでしょうか?
持田:でも不思議と演じている瞬間はあまり自分と離れているところにいるような気がしなくて、自分にもこういう世界線があったのかもなあって思う瞬間もあるんですよね。赤塚という人間を演じることで、自分でも気づいていない可能性を知り、楽しみながらお芝居させてもらっていました。
――赤塚が狩山と出会ったことでどういうふうに変化していくのかも楽しみですが、現時点で持田さんが思うこの作品の見どころを教えてください。
持田:『Believe』は木村さん演じる狩山の人生の一部を切り取ったような作品でありながら、誰もがいろんな思いを抱えながら生きているということがすごく分かるドラマだなと。ある意味“全員主役”といいますか、狩山だけではなく、周りにいる人たちの言葉や行動を丁寧に追いかけていくと、人間の面白さだったり悲しさだったり、良いところも悪いところもたくさん見えてくるんじゃないかなと思います。
――たしかに第1話でも一人ひとりにフォーカスが当たっているように思いました。
持田:ちゃんと一人ひとりに見せ場がありますよね。上川隆也さん演じる林の「存在を反省しろ」という台詞なんてまさにそうで、この人はなんでこんなこと言うんだろうって思うじゃないですか(笑)。天海祐希さん演じる玲子の「夫婦には逃しちゃいけない瞬間があります」という台詞も印象的でしたし、すごく心の中に残る言葉が主人公以外にたくさん割り振られているんです。そういうところが本作の魅力だと思うので、ぜひ皆さんの好きなキャラクターを見つけて、楽しんでいただけると嬉しいです!
■放送情報
『Believe-君にかける橋-』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:木村拓哉、竹内涼真、山本舞香、一ノ瀬颯、北大路欣也、上川隆也、斎藤工、小日向文世、天海祐希
脚本:井上由美子
音楽:林ゆうき
エグゼクティブプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、髙木萌実(テレビ朝日)、松野千鶴子(アズバーズ)
監督:常廣丈太(テレビ朝日)
樹下 直美(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/believe/