『花咲舞が黙ってない』平成版との大きな違いを考える “勧善懲悪ドラマ”の先にあるもの

『花咲舞が黙ってない』平成版との違いとは

 主人公が数々の不正を暴いていく勧善懲悪ドラマは、視聴者に爽快感を与えてくれる。しかし、主人公の活躍の裏には、不正に巻き込まれた登場人物たちにもドラマがあるはずだ。『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)は、2014年版で描いた勧善懲悪の先にある、すべての働く者の悲哀まで描こうとしている。

 第1話で舞は、ある従業員からの内部告発を受け、藤枝支店長(迫田孝也)と取引先社長(竹森千人)の裏金のやりとりについて調べ始めた。舞が事件の真相を暴こうとする裏側には、決死の思いで内部告発をした根津(栗山千明)や、不正をわかっていながら何もできないと思い悩む取引先の経理担当・大沢(山田真歩)の姿があった。

 根津は、融資課として必死に仕事をしながらも、女性だからと藤枝支店長に不当な扱いを受けていた。彼女が懸命に働く姿の回想シーンと、その話を涙を浮かべながら聞く舞を見ていると、根津がこれまで働いてきた時間に思いを馳せてしまう。大沢は社長のパワハラを受けながらも逆らえないと諦めの気持ちで働いていたが、舞の言葉に心を動かされ、社長糾弾へと動き出す。第1話では、根津と大沢の両面から働く女性の苦労や悔しさを描きだしていた。

 第2話では、銀行からの情報漏えい問題が取り上げられた。検査部主任検査官である畑仲(三宅弘城)は、取引先に同業他社の出店計画の情報を教え、その見返りとして再就職の約束をとりつけていたのだ。畑仲は入行後から30年間必死に仕事をして結果を残すも、学歴などの理由から他の行員に先を越されて出世できず、最終的には隅の部署である検査課へ異動させられていた。挙げ句の果てに、シニア研修では第二の人生を提案されてしまう。銀行に裏切られたと自暴自棄になっての不正行為だったのだ。

 畑仲が行ったことはかばいようもない悪事ではあるが、元は熱意を持って企業に寄り添った融資担当の行員だったことを踏まえると、彼の悔しさにどうしても同情の念を持ってしまう。畑仲が暑い日も寒い日も必死に働く姿、出世できずに唇を噛む姿からは会社員の悲哀を感じる。

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