令和版『花咲舞が黙ってない』は前作を超えられるか 今田美桜と山本耕史のいいバディ感

『花咲舞が黙ってない』前作を超えられるか

 今田美桜が主演を務めるドラマ『花咲舞が黙ってない』(日本テレビ系)が、4月13日よりスタートした。2014年、2015年に杏を主演にしてドラマ化されヒットを記録した、池井戸潤の小説を原作にした本作。約10年越しにリバイバルされる今回の2024年版、そして令和版の今回は、主人公・花咲舞役に今田、舞のバディ・相馬健役に山本耕史が迎えられた。

 開始1分半で舞の口から飛び出す名セリフ「お言葉を返すようですが」。前作を観ていたシリーズのファンであれば、この時点で懐かしさとともに心を掴まれるだろう。『花咲舞』をこうしてもう一度リバイバルさせる上で、覚悟しなければならないのは前回との比較だ。今田は杏が築き上げた花咲舞と否応なしに比べられることになる。筆者としてはストレートで爽快さが前面に出ていた杏の演技に対して、今田の花咲舞はフレッシュさと一緒に葛藤や緊張、そして覚悟といった感情がより強く表れているように感じた。

 それは表情豊かな今田の芝居が第一にある。臨店班として藤枝支店長(迫田孝也)の裏金を糾弾する舞。そこには必死の覚悟で臨店班に内部告発した根津(栗山千明)の思いも乗っかっている。「お言葉を返すようですが」に並ぶ「黙りません!」という名セリフに加え、「藤枝支店長もこの銀行も腐ってます!」と元上司へと立ち向かっていく舞の姿に、行員たちは心動かされ賛同の拍手を送る。大きな瞳で藤枝をじっと見つめる視線は力強いが、握った拳は震えている。

 次長の芝崎(飯尾和樹)に肩を押され、ワッ!と前に倒れ込む姿でタイトル、というのは前シリーズの『花咲舞』を踏襲した形だが、令和版としては女性蔑視やパワハラをテーマの一つに描いている点はこの10年での変化と言えるだろう。

 今田ともう一人比較される宿命にあるのが相馬健を演じる山本だ。彼の場合、前回に相馬を担当した上川隆也が舞の叔父・花咲健として出演していることで、注目が幾らか分散されているかもしれないが、それでもだ。山本が演じる相馬は、諦めからくるため息が徐々に消え、舞が悪事に正面からぶつかっていく姿に突き動かされていくのが印象的だ。いつの間にか、表情にも諦めから希望が宿っていくようにも感じられる。先走るところがある舞をさりげなくサポートするというところでも、いいバディであり、前回と同じく食べ物に目がないというところでも共通している。

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