『花咲舞が黙ってない』平成版との大きな違いを考える “勧善懲悪ドラマ”の先にあるもの

『花咲舞が黙ってない』平成版との違いとは

 2014年版ははっきりと不正を正し、悪事を許さないという姿勢が強いドラマであった。舞も相手への同情の余地なく、事実の究明に向けて突き進んでいた。一方、令和版では第1話、第2話ともに悪事の裏側にある事情に対して、哀れんでしまうような回想シーンがしっかりと描かれている。銀行で働く人の事情を描き出し、そこにある悩みを丁寧にすくい取った表現をしているのだ。そんな物語の中で、舞は悪事をはたらいた人を糾弾しながらも、不正を隠そうとする上層部や、その裏側にある銀行の不誠実な体質への怒りをつのらせているように見える。

 相馬は、仕事にある種の諦めがあるという面では2014年版と同様だ。2014年版では、融資のミスを上司から押し付けられたことで仕事へのやる気を失っていた相馬だが、令和版では銀行の体質そのものに辟易しているように見える。彼の過去に何があったのかはまだ明らかになっていないが、なぜ銀行の体質改善を諦めるに至ったかも描かれることだろう。

 日々社会人として働いていると、嫌でも苦労や悩みが生まれる。そしてその種類は職種や性別、年齢によって異なり、千差万別だ。『花咲舞が黙ってない』は、舞と相馬が不正を暴く姿だけではなく、すべての働く人の悲哀を描き寄り添おうとしている。銀行で働く人の姿を丁寧に描いているからこそ、銀行の闇を暴こうとする舞と相馬の姿がよりまぶしくみえるのだ。

■放送情報
土ドラ9『花咲舞が黙ってない』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
TVer、Huluにて、地上波放送後配信
出演:今田美桜、山本耕史、飯尾和樹(ずん)、要潤、菊地凛子、上川隆也ほか
原作:池井戸潤 『花咲舞が黙ってない』(中公文庫/講談社文庫)、『不祥事』(講談社文庫/実業之日本社文庫)
脚本:松田裕子、ひかわかよ
演出:南雲聖一
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:小田玲奈、鈴木香織、能勢荘志
シリーズプロデューサー:加藤正俊
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hanasakimai2024/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/hanasakimai2024
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