『虎に翼』が問いかける“男性性”のあり方 漢気を見せた戸塚純貴の好感度が急上昇

『虎に翼』が問いかける“男性性”のあり方

 理想的な男性像を取り繕いながら裏では女性を貶める男性、人当たりはいいが、身内を馬鹿にすることを平然とやってのける男性、学歴を見せつけられだんまりを決め込む男性。昭和10年に登場する男性像であるが、どれも現代における男性性のあり方を的確に表していた。朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)第17話は、男性のあり方に寅子(伊藤沙莉)たちがざっくりと切り込むなんとも胸が痛い回だった。

 
 腰痛が悪化した教授の穂高(小林薫)の代わりに、民事訴訟の専門家で弁護士の徹男(飯田基祐)が講義を担当することになった。しかし、何やら梅子(平岩紙)の様子がおかしい。お馴染みの「スンッ」のBGMが流れる中、徹男は梅子の夫であることが発覚。そんなことはお構いなしに、徹男は専門である民事訴訟の判例として、嫁入り前の美しい娘が、ある家の飼い犬によって顔にひどい怪我を負わされ、高額な慰謝料が払われたという題材で授業を進めていく。「弁護士はただ金を取ればいいというわけではない」というもっともらしいことを言う徹男に感動していた寅子だったが、「うちの家内は300円がいいところだがな」という梅子を小馬鹿にした発言を聞いて前言撤回。周囲の男子学生が爆笑する中で、寅子たちは居心地の悪さを感じていた。

 続けて、「容姿というものは何より大事」という徹男の発言に納得できずに反論する寅子。「君たちのように利発で、かつ容姿端麗なすばらしい御婦人方には該当しない」という徹男の言葉にも寅子は違和感を覚えていた。この時点で寅子と同様に徹男の振る舞いに対してモヤッとしていたが、授業後に徹男が梅子を貶める発言の数々を聞いて、徹男は無意識に女性を見下しているのだと気づいた。きっとそこには悪気があるわけではないのだろう、この時代はむしろその価値観が普通だったのかもしれない。それを当たり前のように受け入れている梅子の態度もそれを物語っている。

 徹男の態度に釈然としないまま、寅子たちは花岡たち男子学生を誘って皆でハイキングに向けた話し合いをすることに。すると、そこに梅子の21歳の息子が偶然同じお店を訪れてきた。彼は帝国大学(現在の東京大学)の学生で、昭和10年当時も日本の最高学府でもある。明律大学の花岡(岩田剛典)にとって彼らは雲の上のような存在だ。彼らを目の当たりにしてこれまでの威勢の良さは影を潜め、無言になってしまう花岡たち。ここでも寅子の「スンッ」が響き渡る。普段はおにぎりを寅子たちに振る舞い、母親的な存在として慕われている梅子だが、なぜ法の道に進んでいるのかというところは明かされぬままだった。今回で全てが明らかになったわけではないが、家庭事情が明らかになっていくにつれて、徐々にバックボーンが見えてきた。

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