『虎に翼』鷲尾真知子が醸し出す“緊張感” 梅子の義母・大庭常は第13週の鍵となるか

『虎に翼』鷲尾真知子が醸し出す“緊張感”

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』第13週「女房は掃きだめから拾え?」では、遺産相続の案件で梅子(平岩紙)が家庭裁判所を訪問。寅子(伊藤沙莉)は久しぶりに梅子と再会する。

 明律大学で寅子たちとともに法を学んでいた梅子は、家庭では3人の息子の母親だった。彼女の夫は弁護士だが、女性蔑視の考えを持ち、梅子につらく当たっていた。梅子は高等試験直前に、夫から離婚届を出され「子供とは暮らさせない」と通告されたため、三男だけを連れて家を出ていた。そんな梅子が遺産相続の案件で家裁を訪れることになるとは、不安を感じさせる状況だ。

 第13週では、梅子を苦しめる環境を生み出した中心人物ともいえる人物が登場する。それが鷲尾真知子演じる梅子の姑・大庭常だ。第18話で梅子の家庭の事情が明らかになったとき、梅子がこう語っていた。

「お義母様は、大庭家の跡取りとしてご自分で立派な弁護士として育て上げると……」

 大庭家は弁護士一家としての誇りを守ることを第一に考える家庭だ。生まれたばかりの長男にお乳をあげること以外、母としての関わりを全て取り上げられ、「それでも子供たちが立派に育つならばそれでいいと思っていた」と当時の思いを口にした梅子だが、梅子から引き離されて育った長男は、夫にそっくりな、女性蔑視の考えを持つ青年となってしまった。

 鷲尾が演じるのはこの“お義母様”である。鷲尾は1969年に劇団NLTに入団し、1989年に退団。2003年に放送された『大奥』(フジテレビ系)での奥女中役でのコミカルな演技が好評となり、2003年版、2004年版、2005年版、2006年の映画版、2016年版、2019年版とほとんど全てのシリーズに出演した。

 そんな鷲尾といえば、2021年に放送された朝ドラ『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)で、上白石萌音演じるヒロイン・安子の祖母・橘ひさを演じていた。安子の家族は「御菓子司 たちばな」を営んでいる。ひさの人物紹介には物事に動じないしっかり者とあるが、鷲尾の演技から強く感じられるのは、孫娘や家族に向けた深い愛情だ。第1話でお弁当におはぎを入れたいとせがむ安子(網本唯舞葵)に「安子、お菓子ゃあ帰ってきてからじゃ」と優しく諭す姿は、主人公・安子の家族が持つおおらかさの源といった感じがしたし、学校へ行く安子を見送るひさの大きな笑顔に心が温まった。鷲尾もひさ役が自分自身に近い役柄だったと明かしており、「脚本家の描く『ひさ』が自分ですごく腑に落ちて、自然に演じることができました」と語っている(※1)。

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