Netflix版『三体』にみる作り手の覚悟 原作の解体と再構築によって“笑って泣ける”ドラマに
さらに話が進むごとに、原作から踏み込んだ展開も登場する。最も大きな改変は「古筝作戦」だろう。船が大変なことになるシーンなのだが、このアプローチは間違いなく原作ファンを困惑させるはずだ。本来ならエンターテインメント的なクライマックスのはずが、真逆と言っていいシーンになっている。しかし、それによって本作は非常に踏み込んだ、道徳的な問いかけの提示に成功した。これには作り手の覚悟を感じる。そして困惑しつつも、ここでブチ上げた問いかけに、どういうケリをつけるかも気になるはずだ。
ただ、原作ファン的には残念な点もある。特に史強の兄貴に相当する人物(兄貴と呼びたくなる人なんですよ)の存在感が薄いのは非常に残念だ。そして原作の「史強と汪淼の凸凹バディもの」という要素が完全に消えているのも辛い。ゲーム「三体」のビジュアルも、もっと変なものが出てくるかと期待していたので、少し肩透かし感もあった。パッと思いつくだけでも、こういった弱点は確かにある。正直、原作の熱烈なファンに対しては、「こちら、気に入るかどうか分かりませんが……」と腰の引けた姿勢を取らざるをえない。しかし『三体』に入門するか悩んでいる人にとっては、気軽に触れられる作品としてお出しできると思っている。これを気に入ったら原作に当たるもよしである。ともかく本作は『三体』の魅力をより多くの人に届けるためにと、高山善廣vsドン・フライばりに原作とがっぷり四つに組んだ実写化なのは間違いない。僕は普通に続編が観たいっス。
■配信情報
Netflixシリーズ『三体』
Netflixにて、世界独占配信中
製作総指揮:デヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス
出演:ベネディクト・ウォン、リーアム・カニンガム、エイザ・ゴンザレス、ジョナサン・プライス