二階堂ふみ×チェ・ジョンヒョプ『Eye Love You』はなぜ視聴者の心を揺さぶり続けるのか

なぜ『Eye Love You』に夢中に?

 2024年になって3カ月、この間に韓国語を学んでみようかな……と思った人も多いのではないだろうか。かくいう筆者もその一人で、ただいま言語学習アプリにて、韓国語を絶賛勉強中である。どうして急に勉強する気になったのかというと、なにを隠そうドラマ『Eye Love You』(TBS系)に影響されたからだ。ミーハーで恐しゅくです。

 「瞳を見ると相手が考えていることが聞こえてしまう」いわゆる“テレパス能力”を持つ主人公・侑里(二階堂ふみ)が、韓国人の年下男性・テオ(チェ・ジョンヒョプ)と恋に落ちるロマンティックラブストーリー『Eye Love You』。既存のドラマ視聴者に加え、韓国ドラマ好き、さらにはNetflixなどの海外配信により、チェ・ジョンヒョプの祖国・韓国勢をも巻き込んでの大盛り上がりを見せている。侑里を演じる二階堂ふみや花岡役の中川大志はもちろんのこと、初の日本ドラマ出演となったジョンヒョプ、さらに主題歌を担当するOmoinotakeは、その人気を確かなものにしただろう。

 いきなりだが、筆者は「察しがいい人はラブストーリーの主人公になれない」という仮説を立てている。あの人の気持ちが分からない、相手がどう思うか分からないから好きだと伝えられない……このじれったさこそがラブストーリーの真髄であり、物語にドラマを生むからだ。だから“テレパス能力”なんていう、ある種のチート能力を持つ主人公のラブストーリーが成立するのか……?と放送前は疑っていたのだが、それは杞憂に終わる。テオの脳内言語は韓国語だったからだ。

 それゆえに、どんな人の気持ちも読めてしまう侑里でさえ、テオの思考が読めずにモヤモヤすることになる。けれど韓国語を学んだとして、彼の気持ち全部が分かるようになってしまうのも怖い。だからこそ侑里は、テオに教えてもらったわずかな韓国語をたよりに、なんとなく気持ちを探ろうとするのだが、真意までは分からず。ヌナ(お姉さん)ってなに? なんであの人にもチョアヨ(好きです、良いね)を使うの?……と、こうして『Eye Love You』は、テレパス能力系ヒロインのラブストーリーを、見事に成立させたのである。

 さらに、ドラマ内でテオが韓国語を使う塩梅も絶妙。韓国語のセリフの際には、基本的に字幕が入るのだが、一部はノー字幕。全てを知りたい人は配信限定の『Eye Love You【テオの“心の声”字幕付きSPバージョン】』も観てね……とそのまま導かれる仕組みになっている。つまり筆者のように韓国語が分からない視聴者は、リアルタイムで視聴して、さらに配信の“おかわり視聴”までが、もはやルーティーンになっているのだ……改めて恐ろしいドラマである。

 テレビに向かって「アイラブユー!」と叫びたくなるような、今作の魅力はなんだろうか。週初めの疲れを吹き飛ばすようなテンポ感と心地よさ、侑里テオカップリングの“お似合い”感。30代の女性が世間体に急かされたり、年齢を気にすることなく、ただまっすぐに誰かを好きになるストーリーも、日本では新鮮に感じる。よくよく考えてみると“テレパス能力者”で“社長”の侑里は、共感しづらいキャラクター設定ではあるものの、それでも視聴者が心を寄せるのは、侑里というキャラクターを繊細かつ丁寧に演じる、二階堂ふみの卓越した演技力があるからだ。

 そんな今作の好きな理由を挙げるとキリがないが、ここではジョンヒョプ演じるテオにフォーカスしたい。序盤から積極的に気持ちを伝えていたテオは、学生時代から密かな恋心を抱いていたビジネスパートナーの花岡(中川大志)とは、まるで“太陽”と“月”のように対照的な存在として描かれている。侑里に対して「僕を好きになって」と迫るテオのアプローチが“動”ならば、「何年一緒にいると思ってんだよ……」と後出しジャンケンで送り出す花岡の愛情表現はまさに“静”。情熱的でストレートなテオに対して、そっと見守る深い愛情の花岡……という正反対の魅力を持つ二人に、現在進行形で我々視聴者は心を揺さぶられつづけている。

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