『さよならマエストロ』タイトルに込められた真意 西島秀俊が奏でた家族の旅立ちと希望

『さよならマエストロ』タイトルに込めた真意

 俊平が晴見フィルを選んだことを、楽団員たちは複雑な心境で受け止める。世界で活躍する俊平を引き留めていいのか、俊平の決断を尊重すべきなど率直な思いを打ち明けた。晴見フィルのメンバーは俊平を家族同然に慕っていて、いなくなってほしくないと思う反面、俊平の活躍を待ち望んでいる。どちらも偽りない本心だ。響の言葉はそんなメンバーの気持ちをすくい上げるもので、楽団員も音楽でつながった“家族”だから、俊平への感謝を深い部分で共有できたのだと思う。

さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~

 音楽との出会い、そして別れは思いがけず訪れる。晴見フィルのメンバーが俊平と出会ったこと。俊平がシュナイダーと出会い、クラシックの世界に足を踏み入れたこと。それらは偶然にすぎないが、人生を変える出会いだった。シューマン作曲・交響曲第3番「ライン」に寄せる心情を俊平は「希望」であると語る。生きていればさまざまなことを経験するが、どんな日も太陽は昇る。運命が扉を叩く夜でも。

さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~

 指揮者とオーケストラは何によってつながっているのか。楽譜をベースにした共有したサイン、練習を重ねて培われた呼吸、表情や息遣いの変化、それらの根底にある音楽への情熱。俊平と晴見フィルのアンサンブルの深化は、最後のステージから伝わってきた。大げさな仕掛けを用いなくても、丁寧に編まれた各話のエピソードと役者の感情の積み重ねが、魂の奥底に響く感動を生み出すことを『さよならマエストロ』は証明した。

■配信情報
日曜劇場『さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:西島秀俊、芦田愛菜、宮沢氷魚、新木優子、當真あみ、佐藤緋美、久間田琳加、大西利空、石田ゆり子、淵上泰史、津田寛治、満島真之介、玉山鉄二、西田敏行
脚本:大島里美
音楽:菅野祐悟
主題歌:アイナ・ジ・エンド「宝者」(avex trax)
撮影監督:神田創
音楽監修:広上淳一(東京音楽大学)
全面協力:東京音楽大学
企画プロデュース:東仲恵吾
プロデュース:益田千愛
演出:坪井敏雄、富田和成、石井康晴
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/sayonaramaestro_tbs/

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