『HiGH&LOW THE 戦国』は自分自身の“呪い”を解く物語に シリーズを更新する現代性

『HiGH&LOW THE 戦国』を解説

 それぞれのリーダーの性質について語るならば、黄斬はもともと優しい性格で争いを好まないが、そのようなスタンスのままで果たして戦国の世の中で、人を率いていくことができるのだろうかという思いを抱いていて、周囲のものもそれを感じている。

 湧水は、リーダーとして生きる宿命を与えられて生きてきて、その責務をまっとうしようと努力しているが、そのために、本来の自分を抑えて、心を鬼にして擬態して生きているようなところがあり、自分でも気付かぬうちに、そのことに傷ついている人なのではないかと思えた。

 玄武は、その生い立ちから、戦って勝つこと、それによって得た「力」のみが信じられるという人間だ。戦うことこそが生きることであると思い込み、ひとりでそれを背負い、「力」におぼれてしまったようなところがある。

 こうした3人の葛藤は、物語の中のこと、戦国の世の中のことであると切り離してみれないようなところがある。現代人も、周囲の人間との関係性の中で生きていくうちに、あまりにも周囲のことを気にしすぎて、自分本来の姿を隠してしまったり、自己肯定感が持てなかったりすることもあるだろうし、自分の役割を見つけ、それを背負っているうちに、本来の自分が見えなくなったりすることもあるだろう。さらに、自分の背負っているものに対して気負いすぎて、周りが見えなくなったりすることはあるだろう。

 そして、そのような葛藤があることで、物語の中のヴィラン=蛇之内糜爛(阿部亮平)につけこまれ、翻弄されてしまう。心の中に迷いや隙が生まれたことで誰かにその隙をつかれることも誰にでもあることだ。

 しかし、黄斬、湧水、玄武の隣には、吏希丸、弦流、白銀がいる。彼らがどのようにそれぞれの葛藤に気付き、寄り添い、そっと見守り、打破するための助言を与えて、それに気付きを得るのかが、この舞台のクライマックスになっているとも言える。

 これまでの『HiGH&LOW』シリーズにも描かれていた部分なのかもしれないが、『HiGH&LOW THE 戦国』は、より、自分にかけられた「呪い」を解く物語でもあるのかもしれないと思えた。

■公演情報
戦国時代活劇『HiGH&LOW THE 戦国』
公演期間:1月29日(月)~2月25日(日)
会場:THEATER MILANO-Za
企画・プロデュース:EXILE HIRO
演出:TEAM GENESIS
脚本:平沼紀久、渡辺啓
衣裳:有村淳(宝塚歌劇団)
出演:片寄涼太(GENERATIONS)、水美舞斗(宝塚歌劇団)、RIKU(THE RAMPAGE)、瀬央ゆりあ(宝塚歌劇団)、藤原樹(THE RAMPAGE)、浦川翔平(THE RAMPAGE)、小野塚勇人(劇団EXILE)、うえきやサトシ、櫻井佑樹(劇団EXILE)、阿部亮平、久保田創、冨田昌則

<KADOKAWA DREAMS>※日替わりキャスト
MINAMI 颯希(SATSUKI)TSY Ryo AIRA RAIZYU syuichi MIZUHO

<RAG POUND>
SHUN(Baby Twiggz)SHOOT(Soulja Twiggz)KC(General Twiggz)……ほか出演者多数

©2023 HiGH&LOW THE 戦国 製作委員会
公式サイト:https://www.high-low.jp/stage/sengoku/

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