『お別れホスピタル』岸井ゆきのが向き合う最期の日々 『透明なゆりかご』チームの安心感

『お別れホスピタル』が描きだすリアル

 自分はどのような最期を迎えたいか。「まだまだ先のこと」と多くの人が先送りにしている問いと真剣に向き合わざるを得ないドラマが始まる。

 2月3日よりNHK総合で毎週土曜日に放送される全4話のドラマ『お別れホスピタル』は、終末期病棟(ターミナル)を舞台にしたヒューマンドラマ。原作は沖田×華の漫画で、同作者のもう一つの代表作『透明なゆりかご』(講談社)のドラマ脚本も手がけた安達奈緒子が脚本を、柴田岳志が演出を担当する。

 病気やケガ、老衰といった回復が見込めない患者や、日常生活を送るのが困難で助けを必要とする人たちがたどり着く終末期病棟。そこは、終の住処とも呼ばれる「死に一番近い場所」だ。一方、『透明なゆりかご』の舞台となった産婦人科医院は「新しい命が生まれる場所」。対照的に思えるかもしれないが、どちらも“生”と“死”の両方を看護師である主人公の視点から静かに見つめる作品である。

 発達障害であることを公言し、自身の経験を元にしたコミックエッセイ『毎日やらかしてます。』シリーズ(ぶんか社)や『ニトロちゃん:みんなと違う、発達障害の私』(光文社)などで知られる沖田×華。ドラマ化された2作品は一応フィクションという位置付けだが、両方とも元看護師である沖田の実体験を基に描かれている。だから、コミカルな絵柄に一瞬油断してしまうが、綺麗事だけじゃない過酷な現実を突きつけられて暗然たる気持ちになることもしばしば。『透明なゆりかご』のドラマ化にあたり、どこまで映像化できるのだろうと観る前は不安だった。

清原果耶のモノローグが心に沁みる 『透明なゆりかご』が描いた産婦人科の“光と影”

NHKドラマ10枠で放送中のドラマ『透明なゆりかご』(全10話)が、いよいよ最終回を迎えようとしている。なので、このタイミングで…

 だが、それは杞憂でしかなかった。安達が手がける作品は原作モノでもオリジナルでも温かみに溢れているが、彼女は決して現実を薄めない。同作でも、「新しい命が生まれる場所」でもあり、「新しい命が消える場所」でもある産婦人科医院の“光”と“影”を粛々と描き出した。中絶のシーンも子宮の内容物を取り除くところから、そうした胎児の“命のカケラ”を一つのケースに集め、専門の業者に渡すところまでしっかり描かれている。非常にショッキングなシーンだが、「中絶は悪いこと」と伝えたいがためのものではない。風呂場で出産し、赤ちゃんを病院の前に捨てた女子高校生のこともそう。原作と同様、見習い看護師であるアオイ(清原果耶)のフラットな目線で一人ひとりが抱えるそれぞれの事情と選択を映し、命とは何かという問いに私たちを向き合わせた。

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