『鬼滅の刃』柱稽古編は単なる“繋ぎ”ではない ワールドツアー上映で描かれた切迫感

『鬼滅の刃』柱稽古編は単なる繋ぎではない

 もちろん、「刀鍛冶編の里」で苛烈なバトルを経た後だけに、ホッとさせられるようなところはある。蝶屋敷に戻って療養しながらも食欲旺盛な炭治郎を見ていると元気がわいてくる。任務から帰って来た善逸が変貌した禰豆子を見て狂喜乱舞するさまも楽しい。その後に突きつけられる、嘴平伊之助による企みに激怒するところまで含めて、善逸というキャラクターが持つ明るさに救われる。

 産屋敷邸に集められた柱たちに、輝哉の妻のあまねがあることを問い、蜜璃が答えようとしてとっちらかったものとなって伊黒小芭内を悩ませるところは、2人の関係がうかがえて興味をそそられる。淡々と話す無一郎には元に戻ってしまったのかと思わされるが、そこは「柱稽古編」の中でしっかりと明かされる部分。TVアニメを観て無一郎の変わりようを確かめよう。

『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』

 そうした、コミカルなシーンを挟みながらも無惨による進攻が始まっていて、鬼殺隊や柱たちを今までにない苛烈な状況へと引き込んでいく展開を予感させるシーンもしっかりと描かれる。無惨が根城にする無限城がどれだけ不気味な場所なのかを、前に引っ張り込まれた不死川実弥と小芭内が感じ取るシーンが登場する。そこでは、風柱として鬼たちをまとめてなぎ払う実弥の剣や、蛇柱として自在な太刀筋で敵を切り裂く小芭内の剣の凄さにも触れられる。

 禰豆子を刺した武闘派と、蜜璃に近づく者を許さない粘着質といった印象を変える、さすがは柱といった強さにあらかじめ触れられる部分だ。その2人も含めた柱たちが、単に鬼殺隊全体の底上げを狙うだけではなく、自分自身がさらなる高みを目指して研鑽にも励む場としての柱稽古だということが、『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』によって示される。

 これから描かれるTVシリーズ「柱稽古編」では、そうした意識を持って稽古をつける柱たちの心情にも注目していきたい。

 無惨によって鬼にされながらも支配を逃れ、炭治郎と禰豆子の協力を得ながら無惨を倒す研究を続けている珠代の運命も気になるところ。人目を避けて暮らしていた場所に遂に鎹鴉が訪れる。誰からのものかにも、何を伝えるかにも驚けるが、それ以上に発する声にも仰天できる。あるいは堪能できる。

 上弦の鬼に置鮎龍太郎や宮野真守、古川登志夫を並べたキャスティングの妙がここにも! 劇場で聞き入り、そしてMY FIRST STORYとHYDEによる柱稽古編のオープニング「夢幻」に浸って本放送を待ち望もう。

■公開情報
『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」絆の奇跡、そして柱稽古へ』
全国公開中
キャスト:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、岡本信彦、櫻井孝宏、小西克幸、河西健吾、早見沙織、花澤香菜、鈴村健一、関智一、杉田智和
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝、アニプレックス
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/hashirageikohen/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/kimetsu_off

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