『ブギウギ』趣里演じるスズ子の“第一の人生”と重なる? 新曲「コペカチータ」の真価

スズ子の人生を重ねる新曲「コペカチータ」

 「ラッパと娘」の中に出てくる「バドジズ/デジドダ」というスキャットと同様に、タイトルの「コペカチータ」は特に意味を持たない言葉だが、どこかスペイン語っぽく聞こえなくもない。実際に伝統的なタンゴのリズムが取り入れられており、情熱的な踊りが眼前に浮かび、思わず身体が動く。目まぐるしく変わるリズムに合わせ、自由に。そうすると、歌の意味はよくわからなくとも自然と楽しい気分になるだろう。〈不思議なこの歌の魅力  君よ知らずや〉〈コペカチータ この意味教えよ〉とのフレーズからも、曲の解釈やノリ方も聴く人一人ひとりに委ねているような印象を受ける。

 この曲と同様にスズ子の人生もまた一定ではなく、昭和という激動の時代を背景に慌ただしく変化してきた。梅丸楽劇団の発足と同時に故郷を離れ、一躍人気歌手となるも間もなく戦争が始まり、歌う場所を失ったスズ子。悲しい別れも経験し、一方で愛助との運命的な出会いと自身のもとに集まった楽団員との日々に支えられてきた。終戦を迎え、改めて一人の歌手として立ったと思いきや、今度は女優業ときた。その中には自分の意思で決めたこともあれば、周りに流された結果としてついてきたものもあるが、いずれにせよ「よっしゃ、やったるで」と楽しむ心を忘れなかったのがスズ子だ。想定外でもとりあえずノッてみた先に生まれる“おかしみ”が彼女の歌にも滲み出て、聴く人を不思議と虜にする。「コペカチータ」はそんな彼女の真価を最大限引き出すノリにノった楽曲だ。

 第76話では、スズ子の初舞台『舞台よ!踊れ!』が幕開けとなり、ついに「コペカチータ」が披露される。このかなり難解な曲を趣里がどう歌い上げるのか。スズ子の“第一の人生”とも言えるこれまでのエピソードを思い浮かべながら、彼女の歌を噛み締めたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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