映画『イチケイのカラス』竹野内豊が“法律の限界”に挑む 変化したみちおと千鶴の関係性

『イチケイのカラス』が挑む“法律の限界”

 型破りな裁判官が国家権力に挑む。映画『イチケイのカラス』が、1月6日21時からフジテレビ系で放送される。地上波初放送となる本作は2022年に公開され、興行収入10億円を超えるヒット作となった。本稿では同作の見どころを紹介し、『イチケイのカラス』という作品について解説する。なお、本文で言及される内容は作中のフィクションであることをあらかじめお断りしておく。

 2021年4月から6月にかけて「月9」枠で放送されたドラマ版『イチケイのカラス』(フジテレビ系)では、竹野内豊演じる裁判官の入間みちおと仲間たちが大小さまざまな事件を通して司法のあり方を問いかけた。「イチケイ」は連ドラの舞台となった東京地方裁判所第3支部第1刑事部の呼称である。日々大量の案件処理に追われる裁判所で黒い法服をカラスに見立てたイチケイのメンバーはありえないほどユニークだ。その代表が主人公みちおで、入間みちおというキャラクターの魅力はそのまま本シリーズの魅力になっている。

 いつもひょうひょうとしているみちおは、裁判官としては異端である。口ひげを生やしたみちおの法服の下はカジュアルな装いで、執務室にはふるさと納税の返礼品が所狭しと並んでいる。外見は百歩譲って問題はその仕事ぶりだ。刑事裁判官は常時200件以上の事件を抱えており、てきぱきと仕事をこなすことが求められる。さもないと執務が滞って書記官や他の裁判官の足を引っ張ってしまうからだ。最悪の場合、国民の裁判を受ける権利を阻害していると言われかねない。

 みちおはマイペースである。これが意味するところは深刻だ。みちおの影響でイチケイ全体の処理件数は会社なら「倒産レベル」で過少。ということで、イチケイを立て直すべく赴任したのが特例判事補の坂間千鶴(黒木華)。のはずが、いつの間にか千鶴もみちおに感化され、連ドラ終盤では一緒になって司法の闇に立ち向かった。

 みちおの特技は「お出かけ」だ。正確に言うと裁判官が職権を発動して行う「検証」で、真実を求めてみちおは事件現場へおもむく。『イチケイのカラス』が裁判官版の『HERO』(フジテレビ系)であることは以前にも指摘したが、『HERO』の主人公・久利生公平(木村拓哉)とみちおには共通項がある。通常、裁判官が現場検証をすることはまれで、検察官も警察からの捜査資料に疑義がなければあえて証拠を集める必要はない。これに対して、みちおも久利生も積極的に新証拠を探す。『イチケイのカラス』が『HERO』の系譜にあることは明らかだ。

『イチケイのカラス』が追求する司法の可能性 木村拓哉主演『HERO』へのオマージュも

弁護士あるいは検事が定番の「法廷もの」に出現したニューヒーロー。6月14日に最終回を迎える『イチケイのカラス』(フジテレビ系)に…

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