『ブギウギ』菊地凛子が放つ歌い手のオーラ りつ子を知る上で欠かせない戦時下の出来事
中断期間を挟んだ第64話、第65話で『ブギウギ』が戦争体験を取り上げる意義は大きく、朝ドラ『エール』に続いて、第二次世界大戦の教訓を風化させず、戦争が日本にもたらしたものを捉え直そうとする視点のあらわれと言える。りつ子のエピソードは歌手・淡谷のり子の実体験がベースにあるが、戦後、国民的歌手となったりつ子とスズ子を知る上で戦時下の出来事は避けることができない。りつ子役の菊地凛子は、1月3日に放送されたスペシャルドラマ『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)のユーモアあふれる演技から一転して、時代と対峙する歌い手のオーラを放った。
滞在先の旅館でスズ子は静枝(曽我廼家いろは)と出会う。空襲の被災者で溢れかえる旅館に、女中の静枝が娘の幸(眞邊麦)を連れてきたのはわけがあった。どこか思いつめた様子の静枝は夫が戦死し、女手一つで幸を育てていた。スズ子の脳裏に六郎(黒崎煌代)の面影がよぎった。ぶしつけな質問を詫びるスズ子に、静枝は国のために命を捧げた夫は自分の誇りで悲しくないと返す。けれどもその表情は悲痛さを漂わせていた。
目を国外に転じると、上海にいた羽鳥は自由な音楽のビジョンを描いていた。「音楽が時世や場所に縛られるなんてバカげてる。音楽は自由だ。誰にも奪えないってことを僕たちが証明してみせよう」と羽鳥は意気込む。羽鳥が作曲した「夜来香幻想曲」は敵性音楽のシンフォニックジャズにブギのリズムを取り入れており、戦後の展開を先取りしていた。李香蘭(昆夏美)が歌う「夜来香」が新しい時代を予感させた。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK