実写版『幽☆遊☆白書』不安から一転の“逆転ホームラン”に 作品を支える迫力の戦闘シーン

『幽☆遊☆白書』を支える迫力の戦闘シーン

 第一報を聞いたとき耳を疑い、初めて予告でビジュアルを観たときは、時限爆弾と恋人をいっぺんに手に入れたような気分になった人が多いだろう。期待と不安、ともにあり。そんなわけで、まさかまさかの『幽☆遊☆白書』(2023年)実写化である。

 いや、ごめんなさい。ウソをつきました。期待と不安で言えば、半々というより3:7で不安の方が多かったです。Netflixの和製ドラマも『サンクチュアリ -聖域-』(2023年)や『離婚しようよ』(2023年)など、高いクオリティの話題作・人気作も出てきたが、「とはいえ『幽☆遊☆白書』は厳しくないか?」というのが正直なところだった。原作は、冨樫義博の大ヒット漫画であり、数々の名シーン・名言に彩られているものの、それはあの冨樫先生のペンだからこそ成立していたもので、実写にすると厳しいと思われた。「ローズウィップ」や「邪王炎殺黒龍波」なんて、果たして俺は真顔で見えるのか? かつて片腕に包帯を巻いて、マジックで額に邪眼を描いた飛影キッズの俺は心配で仕方がなかった(油性で描いたので数日間絆創膏を頭に貼って過ごし、飛影じゃなくて『三つ目がとおる』になった)。

 しかし、出来上がった作品はそんな不安を消し飛ばす、痛快娯楽アクションドラマとなった。個人的にこの作品に対する感覚は、同名原作漫画を実写化した『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2019年)を観たときに近い。この作品には北条司先生が「その手があったか!」とコメントを寄せていたが、私も実写『幽☆遊☆白書』には同じコメントを寄せたい。

 『幽☆遊☆白書』、というか冨樫義博の漫画には様々な要素がある。『週刊少年ジャンプ』らしく少年漫画の王道的な部分は押さえつつ、他に類を見ないビジュアル、心理戦、単純な勧善懲悪ではない倫理観、ポンポン体のどっかが飛ぶ残虐描写、不謹慎&ベタベタなギャグ……などなど、一筋縄ではいかないのが冨樫作品の最大の魅力である。そして今回の実写版では、その中でもジャンプ漫画、あるいはヤンキー漫画的な部分を切り口に、作品を再構築しているのだ。つまりは浪花節、ダチやツレのために命をかけて、意地を張って、そのド根性が限界を超えたパワーアップに繋がる、という展開である。一筋縄ではいかない原作を、ぶっといひとつの麺しか入っていない“一本うどん”ばりに整形してみせたのだ。これは挑戦的な決断だが、結果としては大成功だったと言いたい。努力・友情・勝利のジャンプ感は確かにあった。

 挑戦的、という意味では全5話という潔さ、そして思い切った物語の再構成も評価したい。原作の1巻~13巻のあいだの要素を思い切り削りつつ、しかし大事な部分はしっかり残している。誰もが思い浮かべる名セリフは半ば強引にでも入れているし、ちょっとしたサービスも忘れない(「微笑みの爆弾」が流れるシーンで思わずニッコリ)。

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