実写版『幽☆遊☆白書』は成功と言えるのか? 『ONE PIECE』との違いなどから検証

実写版『幽☆遊☆白書』は成功と言えるのか?

 冨樫義博の漫画『幽☆遊☆白書』は、1990年代を沸かせた作品の一つだ。TVアニメ版も好評を博し、その後の『HUNTER×HUNTER』とともに、熱狂的なファンがいまも多い。海外でも人気があり、アカデミー賞監督クロエ・ジャオの最も好きな漫画でもあるのだという。

 そんな『幽☆遊☆白書』は、長らく実写化困難と考えられていた作品でもある。ファンタジックな部分が多く、非現実的なアクションが多い内容を、生身の俳優が演じるのは厳しいところがあるのは確かだ。しかし、このような常識は、アメコミ映画が次々に大ヒットしている現在、打ち崩されてきている。折しもNetflix配信の実写ドラマ版『ONE PIECE』が好評を博し、シーズン2の製作が決定している状況があるのだ。

 『ONE PIECE』はアメリカのスタジオの作品だが、今回の『幽☆遊☆白書』は、企画とエグゼクティブ・ プロデューサーの坂本和隆(Netflix)、プロデューサーに森井輝、監督に月川翔を迎えるなど、日本の製作陣が中心となり、複数のアメリカのスタジオと協働した作品となっている。『今際の国のアリス』、『サンクチュアリ -聖域-』など、日本のNetflixが送り出すドラマが世界でも注目を浴びてきているが、今回はこれまでにない規模で映像化困難と言われた題材に挑んでいる。

 さて、そんな初の実写ドラマ化となった『幽☆遊☆白書』の出来はどうだったのか。ここでは、本シリーズを評価しながら、そこで何が描かれたのか、そしてこのドラマの存在が意味するものを考えていきたい。

 最大の注目ポイントは、原作の世界観が実写映像で表現できたのかという点だろう。ここについては、さすがにハリウッドの作品を製作してきたVFXのスタジオと連携し、5年もの歳月を費やしているだけに、かなり精緻なレベルで達成されていると感じられるところだ。とくに感心させられるのは、実写で違和感がないように世界観を変化させているのでなく、原作やアニメ版のイメージをかなりの部分まで拾っているという点だ。だから本シリーズ鑑賞中は、「『幽☆遊☆白書』を観ている」という実感が大きい。

 とくに、戸愚呂兄弟の自由自在に変化する肉体や、人間の限界を超えてムキムキになる描写を、リアリティを保ったままで表現できている点には驚かされた。実写作品としてリアリティが増大したことによって、妖怪の描写が恐怖を感じるほど真に迫っている部分にも目を見張る。対象を子どもを中心にしていたと考えられるTVアニメ版では、原作の持つ、ところどころアブノーマルに見えるペンの筆致までは再現していなかったが、本シリーズの恐怖表現は、それに代わるものとして楽しめるのではないだろうか。

 出演者についても、主演の北村匠海をはじめ、イメージを損なわないように配慮しながら実力のある俳優を選んでいる。だからこそ、SNSなどで日本の漫画作品の実写化企画が叩かれがちな状況を破り、好意的な評価が多い状況を作り出している。これは実写ドラマ版『ONE PIECE』と同様の印象である。つまり、一番厳しいと思われていた部分はクリアーできたというところだろう。逆に、ファンに気をつかい過ぎているという印象すらある。

 このように人気のある漫画やアニメ作品の実写化作品が、神経質なほどテイストの再現に腐心するようになったのは、一部の漫画・アニメのファンから必要以上に攻撃されたり、面白おかしくネタとして消費されてきた経緯があるからだろう。これまで安易に原作の人気に便乗して完成度の低い実写作品が送り出されてきたケースがあったのも確かだが、実写化という行為自体や、原作を改変すること自体に対して不満をぶつける風潮が生まれたことで、公開、配信前からネガティブなイメージを植え付けられる作品があるのは、さすがに理不尽だと思えるのである。だが、多くの前例、試行錯誤があったからこそ、近年の作品の高い完成度が実現していることも忘れてはならない。

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