『ブギウギ』看病中に訪れたスズ子と愛助のロマンス なぜ悲劇でも“笑い”溢れる?

『ブギウギ』なぜ悲劇でも“笑い”溢れる?

「僕の病気がよぉなったら、結婚してください」
「ええよ。きっと結婚しよう」

 12月25日、クリスマスの放送となった『ブギウギ』(NHK総合)第61話。愛助(水上恒司)の病名が明らかになる苦しい展開ながらも、彼とスズ子(趣里)の交わした愛の誓いがお茶の間に温かな空気を届けた。

 村山興業の後継ぎである愛助の妻には相応しくないと、トミ(小雪)から暗に示されたスズ子。それでも2人は共に生きていくことを決める。たとえ、自分たちの足元が戦争でぐらつき始めていても、繋いだ手を決して離そうとはしない彼らに神様は次々と試練を与えるのだった。

左から、村山愛助(水上恒司)、福来スズ子(趣里)

 ここのところ頻繁に咳をしていた愛助がかっ血。すぐさま医者を呼びにいったスズ子は、診断名を聞いて言葉を失う。愛助は以前に“結核”と診断されており、それが今回再発したのだ。結核は今でこそほとんどの場合が治る病気だが、医者が言う通り、昭和19年当時はまだ特効薬がなかった。安静にしておくことしか手立てはなく、入院を余儀なくされる愛助。スズ子もしばらくつきっきりで看病することになった。

 年齢や立場の違いに、戦争。すでに大きな壁がのしかかる中でさらに愛助の病気が重なる。普通の人間ならば、悲劇的な運命に打ちのめされているに違いない。しかし、スズ子と愛助は希望を絶やさず、いつでも互いのそばにいれる幸せを享受している。

 愛助の入院の報告を受け、病院に急いで駆けつけた坂口(黒田有)が最初に目にしたのは、一生懸命看病しているはずのスズ子が愛助の膝の上で幸せそうに眠る光景。「さっきまで看病してたんだけど……」と必死で小夜(富田望生)がフォローする姿におもわず笑ってしまった。前話で空襲警報発令中にスズ子がお腹を壊してトイレから出られなくなってしまい、避難が遅れたことを後になって愛助と笑い合うシーンも印象的だったが、切迫した状況下でも妙に緊張感のない2人を観ていると、なんだかこちらも拍子抜けしてしまう。

 だが、人間だからきっと何らかの避難中に便意を催すことも、大切な人の看病中に睡魔に襲われることもあるだろう。かの有名な喜劇王チャールズ・チャップリンが「笑いとはすなわち、反抗精神である」という言葉を残しているように、そういう戦争や病気といった悲劇を撥ね除けるほどの滑稽さがこのドラマの魅力であり、スズ子の魅力でもある。

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