『マイハル』塩村Pに聞く制作意図 広瀬アリス×道枝駿佑が教えてくれた“一歩踏み出す勇気”

『マイハル』に込めた“学び直し”をPに聞く

「今、一歩を踏み出す勇気」を掲げた理由

――塩村さんは放送前に「このドラマのテーマは、『今、一歩踏み出す勇気』」とコメントされていました。改めて今、このテーマを掲げた背景を聞かせてください。

塩村:近頃では、世間で「学び直し」という言葉もよく耳にしますが、要は踏み出すか、踏み出さないかが人生の別れ目なんじゃないかとすごく思ったんです。私自身は割と踏み出せないタイプの人間でして。個人的なお話をしますと、今41歳なんですが今いる会社の同期はみんな退職してフリーになっているんです。それは30代のときに一歩踏み出していった結果なんだと思うんです。踏み出さないまま、会社員として今いる環境でやれることをやってきた、みたいな感覚は佐弥子の惰性の10年間にもちょっと近いものを感じていて。もちろん、いろんな仕事をさせていただいて、全部に全力投球してきましたし、楽しかったし、感謝もしてるんですけどね。そんなことを私自身が問いかけていたときに今回の企画の話がありまして、これはすごくシンパシーを感じる方も多いのではないかと思ったんです。

――たしかに。20代から30代へ、30代から40代へと、年齢のステージが変わる節目は特に「このままでいいのだろうか」と見つめ直すタイミングではありますね。

塩村:現実的には「学び直し」は、それができる環境にいる人と、そうではない人がいるかもしれないけれど、その人なりの「一歩踏み出す勇気」について打ち出していくことはできるんじゃないかと考えたんです。ただ、私なんかは一歩を踏み出すことがすごく重いことなので、「踏み出す勇気」を伝えていこうとばかり思っていたんですが、脚本の北川さんに言われてハッとしたところもあって。第7話で佐弥子のセリフにもあるんですけど、「踏み出したらそれで終わりじゃないよ」っていうことなんですよね。大学に入ったり、転職をしたり、新しい環境に飛び込んだら、“一旦、自分頑張った”みたいな気持ちになってしまいがちですけど、一歩を踏み出したら、その次の足も踏み出し続けないと本当に望む未来には前進していかない。そういうことも、この物語の後半では伝えなければ、実際に今いろんなことに奮闘している人たちに共感してもらえないんだろうなと思って、後半戦を戦っています。

――たしかに後半になるにつれて、将来やキャリアについてリアルな葛藤もしっかりと描かれているのが印象的でした。

塩村:実は幼なじみのお母さんが建築家で、このドラマの取材としてお話を聞いたことがあったんです。その方は、もともと建築家のお仕事をされていたんですが、お子さんを3人産んだのをきっかけに専業主婦になられて。20年弱の子育てと家事生活を経て、建築家の仕事を再開されたんです。そして、建築家になった長男と一緒に会社をやっているという。その方から「ブランクと考えない」という言葉が聞けたのが、すごく印象に残っているんです。専業主婦として過ごした20数年間、母親として家族や学校、地域のコミュニティと関わってきたことも「全部仕事に活かせる糧でしかない」「だからブランクとは考えないで、私はやってるのよ」と。私自身、そのお話にすごく感銘を受けたんですよね。そこから生まれたのが第3話の「周回遅れじゃなくて、人より1周多く走っているだけだよ」っていう拓のセリフなんです。ちょうど世の中の動きとしても、コロナ禍で様々なことがストップした数年間がありましたよね。「あのとき、こんなことをしたいと思っていたのに」とか「本当はこれがやりたかった」という、人生のくすぶりのようなものを抱えている方も少なくないかと思います。そして、いろんなことが緩和されてきた今こそ一歩を踏み出そうとしている人も。そんなふうに自分の人生をアップデートしようという人たちの心に、このドラマを通じて少しでも響けばいいなと思っています。

――ありがとうございました。では最後に、第10話の見どころについて聞かせていただけますか?

塩村:ついに大学4年生の秋。就職活動に卒業設計に、発表にと1人奮闘していた佐弥子は、そばで寄り添ってくれる日向さん(安藤政信)との未来もあるのかな、なんて思う瞬間もありました。そんなときに帰ってくるのが拓なんですよね。私たちとしても佐弥子が学び直しを決意して、大学に入り、再び社会に出ていく前に、どういう選択をするのかをしっかり選んで描かないといけないねっていうのは、大きな課題でした。本当にこの就職でいいのか、建築家としてどんなビジョンを彼女が描いて卒業に向かっていくのか。そして、そこに拓がどう関わっていくのか……。でも、最初のほうにお話しましたが、このドラマは「ラブコメ」の「コメ」の部分を活かさねばという思いが私たちの頭の中に常にあるので。ただ、想いが通じ合うまでに時間がかかった佐弥子と拓なので、再会したからといってすぐにはもとの関係には戻りません(笑)。とはいえ、佐弥子と拓の2人らしいゴールを用意できたと思っていますので、ぜひラストまでお楽しみください!

■放送情報
火曜ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』
TBS系列にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:広瀬アリス、道枝駿佑(なにわ男子)、伊原六花、飯沼愛、水沢林太郎、箭内夢菜、濱尾ノリタカ、イモトアヤコ、安藤政信
脚本:北川亜矢子
主題歌:なにわ男子「I Wish」
プロデューサー:塩村香里
演出:青山貴洋、山本剛義、泉正英
企画:吉藤芽衣
編成:武田梓
製作:TBSスパークル
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/mysecondaoharu_tbs/
公式X(旧Twitter):@myharu_tbs
公式Instagram:myharu_tbs
公式TikTok:@myharu_tbs

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