『マイハル』道枝駿佑が視聴者の心を振り回す 日向が傷ついた佐弥子にアプローチ
これほど1話に“喜怒哀楽”が詰まっているドラマもなかなかない。そう思わされるくらいに感情を揺さぶられた回だった。これまでも人生の“第二の青春”を熱量高く描いてきた火曜ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』(TBS系)。最終話直前というクライマックスを迎えて、容赦なく視聴者の心をぶんぶんと振り回す。
佐弥子(広瀬アリス)は、拓(道枝駿佑)の足かせになりたくないと、自ら別れを提案したはずだった。とは言いながらも、本音は別れたくなんてないし、何よりも彼が全力で自分を愛してくれていることをわかっていたから、心のどこかでは本気で別れる覚悟などできていなかったようだ。対して、拓も別れるつもりなどさらさらなく、佐弥子から発破をかけられる形でスイス行きを決意するも「俺と遠距離恋愛してください」「絶対ぇ、別れてやんないからね」と嬉しい言葉をかけてくれる。思わず「それでこそ私が惚れた男だ!」と拓の背中に飛びつく佐弥子の喜びように、見ているこちらまでニヤけてしまうほどだった。
だが、拓の用意したカルティエの指輪を見つけたキイナ(伊原六花)の言葉をきっかけに、2人の関係は大きく変化することに。拓にとってその指輪は変わらぬ愛を誓うものではあったけれど、佐弥子と“いつか”家族になりたいという思いを“今すぐ”どうこうというつもりではなかった。そんな拓に「ちゃんとプロポーズをして、2年で帰ってきな」と釘を刺したキイナ。2年後、佐弥子は35歳になる。女性の30代後半は拓が考えている以上に、シビアな選択を迫られる時期なのだと伝えるのだった。
「結果を出すまでは帰らない」と話していた拓だけに、きっとその納得のいく結果を成し遂げたときにこそプロポーズをしたかったのではないだろうか。ただし、それがいつになるかは明言することができない。そのせいで佐弥子の人生を縛り付け、選べるはずだった幸せを手放すことになるかもしれないなんて……。そう考えて指輪を渡すことなく、別れを切り出した拓。その思考プロセスと導いた結論は、佐弥子が拓の将来を思って別れを提案したときとそっくりそのまま。それだけこの短期間で、拓の精神年齢が佐弥子にグッと近づいた証だろうか。いや、むしろ本気で別れようとしている拓のほうが、少しだけ大人になったとも言えるかもしれない。
空港で見送りに駆けつけた佐弥子の声にも振り返らず、1人で涙を流した拓。ここで振り返っては決心が鈍ると思ってのこと。そして、佐弥子もまた「待ってるから」とは言わなかった。いつも仲間の前では明るく楽しい“さや姉”だった彼女が「頑張ったよね」とぐしゃぐしゃに泣く姿に、きっと視聴者全員が心の中で抱きしめたことだろう。とはいえ、そこで立ち止まらないのが佐弥子の魅力とも言える。そもそも大学に入った理由に立ち戻る。大好きな建築を学び、建築関係の仕事に就くこと。原点に立ち戻り、勉強と就職活動に力を入れていく。拓への想いは一度引き出しの奥へと、しまい込んで……。