『マイハル』塩村Pに聞く制作意図 広瀬アリス×道枝駿佑が教えてくれた“一歩踏み出す勇気”

『マイハル』に込めた“学び直し”をPに聞く

 いよいよ最終話が、12月19日に迫った火曜ドラマ『マイ・セカンド・アオハル』(TBS系)。「消化試合のような人生」から脱却すべく、大学で学び直しを決意したどん底OL・佐弥子(広瀬アリス)。その体当たりでガムシャラな姿に勇気をもらった人も多くいることだろう。

 ひょんなことから出逢った10歳年下の拓(道枝駿佑)との甘酸っぱいラブストーリーにも大いに心躍らされたかと思いきや、30歳半ばからの就職・妊娠・出産……と、女性のキャリア形成に立ちはだかる現実もシビアに描かれた本作。

 第9話ではお互いの将来を思うからこそ別れを選択した2人。果たして佐弥子は自分の人生をどう設計していくのかと先の読めない結末に、最終回を楽しみにする声も高まる一方だ。そこで、本作を手掛ける塩村香里プロデューサーに、クライマックスの見どころや、今『マイ・セカンド・アオハル』を制作した理由についてたっぷり語ってもらった。(佐藤結衣)

こだわったのは、「ラブ」と「コメ」のバランス

――毎話「ラスト数分の衝撃がすごい!」と話題の本作ですが、オリジナル脚本で本作を描く上で意識されていたことはありましたか?

塩村香里(以下、塩村):プロデューサーコメントで「衝撃のラストにご期待ください」って毎話言っていたような気もしますが(笑)。意識していたところとしては、これは青春ラブコメディであるという点でした。もともと編成の武田梓さん、企画の吉藤芽衣さん、脚本家の北川亜矢子さん、そして私と、30~40代くらいの女性を中心になって台本を作っていったので、佐弥子の視点にすごく近い感覚があったんですよね。そこで「年上女子と年下男子のラブストーリーっていうふうには見られたくないね」とは当初から話していたんです。人生をもう1回やり直すために大学に入って、自分よりも若い世代の人たちにすごく刺激を受けるということがまず大前提としてあって。それは恋愛だけじゃなく、勉強面においても、将来の考え方においてもそうで……。そうした中で、今までになかった感情が生まれてくるみたいなことをやっていきたいと。一方で、監督陣が全員男性ということもあって、毎話セッションしながら撮影していったのも特徴的だったと思います。その両方の視点を活かしながら、どちらかが一方的ではなく、お互いに相互作用で成長していく様子を描いていこうという思いがありました。そういった意味でも、「ラブ」と「コメ(ディ)」のバランスというのは、すごく大切なところでした。そんな北川さんの面白い脚本を、広瀬さんが全力のサービス精神で演じてくださった第1話を通じて、「これはものすごい科学反応が起きたな」って思いました。

――振り返ると、ラブの要素が強くなるほど広瀬さんの顔芸が炸裂していましたね(笑)。

塩村:本当にありがたかったです。どうしても第4話、第5話あたりからラブ路線が強くなっていくのは仕方のないところだったんですけど、それだけでいってしまうと「あれ、これラブコメディだったよね? あの第1話の白玉佐弥子はどこいった?」みたいなことになってしまうのは、非常にもったいないと思いまして。なので、台本をつくるときにも「オチをつけたい」というとアレなんですが、「素敵なラブのシーンで終わっちゃダメだ! 佐弥子はそれでは終われない!」みたいなところがありました(笑)。拓と一晩を過ごした朝にシラスを持ってきた真凛(飯沼愛)ちゃんに見つかってしまったり、海辺でのラブラブなキスシーンをスッカ(箭内夢菜)ちゃんに双眼鏡で覗かれて「チューした!」と言われてしまうみたいな。

――佐弥子自身も拓の甘い言動に対して「キュンとさせるんじゃないよ」などツッコミを入れていくのも秀逸でした。

塩村:そうですね。そのあたりも結構意図的に入れていった部分でもありました。やっぱり自分よりも10歳も年下の恋人って1つひとつ絶対にキラキラしているじゃないですか。眩しすぎると思うんです。なので、それを真に受けてポーッとするだけじゃない佐弥子というキャラクターが第1話から作れたのが大きかったですね。みなさんがテレビを観ながら思わず言ってしまいそうなことを、佐弥子自身がモノローグで代弁する、という流れが作れたのは、とても良かったと思います。

観てみたかった、広瀬アリスの10年間

――主演が広瀬アリスさんだからこそ成り立ったドラマだったんですね。

塩村:本当にその通りだと思います。広瀬さんとは10年くらい前に、単発のお仕事でご一緒したことがありまして。そのころ、すごくおとなしいイメージだったんです。でも、そこからいろいろなお仕事を経験されて、最近はコメディエンヌとしても光る役を演じられているのを観て「広瀬アリス、すごい輝いてる!」と、ここ数年感じていて。この10年間で変わっていった彼女を知りたいなって思っていたんです。ちょうど白玉佐弥子も10年間のくすぶりを経て“セカンドアオハル”を迎えたわけですけど、そこにすごく広瀬さんがピッタリとハマってくれるんじゃないかなと感じました。ですが、実際に演じてもらったらもう想像以上というか、こちらの期待を遥かに超えてきたという印象です。コメディの様子だけではなく、表情だったりセリフのトーンだったり、とにかく細かいお芝居が本当にお上手で。そこがラブのシーンや、将来とか勉強に悩むちょっとシリアスなシーンとのバランスも取れているのだろうなと。また、広瀬さんのサービス精神は演技だけではなくて、現場を盛り上げてくれるムードメーカーとしても発揮されていて。若いキャストのみなさんにも、広瀬さんが気さくに話しかけて、その姿はまさに“さや姉”でした。メイキングを撮らせていただいたときには、広瀬さんが道枝さんをイジる流れが定番化してきて、すごくいいチームワークになったんですよね。この前なんかは、夕食休憩のタイミングで「ここにお弁当ありますよ」ってスタジオの外で待っていたんですけど、なかなかみんなが出てこなくて。覗いてみたら「このまま食べてていいですか? 塩村さんも一緒に食べましょうよ!」とお寿司パーティーが始まっていたくらい。私も「じゃ、エビください」なんて自然と溶け込んでしまうような雰囲気で。それも座長・広瀬アリスだからこそ作り出すことができた空気感なんだと思います。

――そうした空気があるからこそ撮れた名シーンも多くありそうですね。

塩村:それで言うと第4話のプールでのキスシーンは、本当にこの現場だからこそ撮れたものだと思います。佐弥子と拓が夜のプールに忍び込んではしゃぐみたいなシチュエーションって、やりすぎるとファンタジーになってしまうなと感じていました。加えて、脚本家の北川さんにとってプールのシーンは特別に大切にされている思い入れのあるシーンとお聞きしていたんです。なので、やるからには将来的にこのドラマの代名詞になるようなシーンにしないと、と結構な覚悟を持って挑みました。そのために広瀬さんと道枝さんにはリアルに夜中のプールで夜通し遊んでいただいたんです。撮りたかったのは、単純に気持ちが高まってキスをしてしまうのではなく、全てが抜け落ちたあとに残ったなんとも言えないキス。夜のプールという背徳感と、得体のしれない高揚感。そしてはしゃぎまくってアドレナリンが出ている感じと、気だるさに包まれているときに、ふと2人の空気が止まって引き寄せられるように唇を重ねてしまった……。そんなキスをとにかく美しく撮りたかったんです。撮影は早朝の4~5時まで続き、季節的にもそろそろ寒くなってくるというタイミングだったので、きっと2人とも辛かったと思います。それでも現場を盛り上げつつ、納得のいく画が撮ろうと一丸となって取り組めたのは、広瀬さんと道枝さんだったからだと思います。

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