『ブギウギ』水上恒司の“愛くるしさ”の説得力 愛助の行動は現代だったら危うすぎ?

『ブギウギ』水上恒司“愛くるしさ”の説得力

 スズ子(趣里)と、彼女のファンである村山愛助(水上恒司)の恋の始まりが描かれたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』第11週。正直、出会いを振り返ってみると愛助は最初こそ“推しに遭遇できたラッキーなファン”だったが、徐々に話を聞いていくと「おやおや?」と思う部分も多く、なかなか不思議な魅力を持つキャラクターである。

 初対面はスズ子の公演先の控え室。興行主に連れられた愛助は戸惑っていて、まともにスズ子と会話をすることもできなかった。その後、宿で偶然出会った時もどうしたらいいかわからない様子だったが、一つだけ確かなのは、彼はスズ子を見る時、絶対と言っていいほどまばたきをしない。“一瞬でも目の前のスズ子を焼きつけておきたい”、そんなファン魂が痛いほど伝わるのだ。それは再び列車内で起きた“偶然の遭遇”の時に確信に至る。

 子供に向かって「ふるさと」を歌うスズ子を見る目には、確かに推しに対する焦がれ以上の感情が感じられた。しかしそれは欲情とも少し違って、本当にスズ子が健やかでそこに存在することへの感動とか、尊ぶ気持ちに近い。推しと話すこと自体畏れ多い、みたいな感覚がある愛助が蓋を開けたらスズ子が「ラッパと娘」を歌い出した頃、いや大阪時代の「梅丸少女歌劇団(USK)」の頃からスズ子のファンであることが発覚。現在は昭和18年、スズ子が「ラッパと娘」を発表したのが昭和13年。この時点ですでに5年はファンであることがわかり、さらにUSK時代を知っているとなると下手したら小・中学生の頃から彼女に魅了されていることになるのだ。

左から、小林小夜(富田望生)、福来スズ子(趣里)、村山愛助(水上恒司)。 愛助の部屋にて。収集したスズ子のレコードを嬉しそうに見せる愛助。

 想像以上のファン歴はさておいて、様子がおかしく感じてくるのは列車のやりとりでゲットしたスズ子の住所に片っ端から送っていた手紙の内容だ。元々、小夜(富田望生)ほどではないものの、私たち視聴者も愛助の遭遇率に思わずストーカーか何かと疑ってしまいそうになる節はあった。だからこそ、彼女がスズ子に簡単にファンに住所を教えたことを叱る気持ちもわかる。しかし、愛助の送った一通目の手紙はそれこそ距離感を心得ているファンレターとして好印象なものだった。スズ子も読む前には「えっ、手紙?」と戸惑いを表していたが、読んだ後には体を気遣ってくれる彼の優しさに微笑む。しかし、距離感がいいままで終わるかと思いきや少し冷や汗を感じてしまう残りの手紙の量。まるで返事をしていないのにどんどんLINEが送られてくるような感覚。現代なら愛助は間違いなく“レッド・フラッグ”なのだ。

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